幕間＊踊る皇帝と躍る魔女 ページ17
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―――――― Side_天祥院英智
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……予想外にも程があった。
否、彼女がこちらの予想通りに動いた試しなど、今まで一つとして無いのだけれど。
それにしたって、今回は――あまりにも突飛過ぎた。
『してやられた』。それが、正直な感想。
だって、一体、誰が思い付けると言うのだろう？
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それは、あの『フラワーフェス』の日にまで遡る。
『フラワーフェス』の終了後。
喜連川くんが去り、味気ない夕食までの退屈な時間を、1人で持て余していた時のこと。
「――やあ、英智。久し振りだね」
小さなノックの後、僕の返事を待たずに扉を開けたのは、僕の父親だった。
僕を少し老けさせたようだ、とよく例えられるその相貌は、穏やかな笑みを浮かべていた。
「えっ――父上？ どうなされたのですか、こんな時間に」
僕の父は、天祥院財閥の現当主。配下の企業や事業を掌握し、その全体的な采配を担っている最高責任者だ。
当主の座に就いたのはつい最近だが、それでも、僕が物心付くどころか、生まれるよりも遥かに前から、前当主であった祖父の指示の下、あちこちを忙しく飛び回っていたと言う。
下手な社長よりも遥かに多忙な人、と言うのが、僕が幼少時から抱いている、父に対するイメージである。
なのに、この時間に、こんな所に居るなんて……。何があったのだろう。
「ああ、珍しく時間が空いていてね。ちょうどこの病院の近くを通ったから、たまにはお前の顔を見るのも良いかと思って」
「そう、でしたか……」
……それ以上、会話が続かない。
会う機会が殆ど無いせいで、どうにも距離感が掴めない、というのもあるけれど。
僕達は親子であり、仕事相手では無いので、何も無理に会話を続ける必要性は無い……というのが一番大きいかもしれない。
だが悲しい事に、必要性の有無と居心地の善し悪しは別問題である。どうしたものか。
しばし当てもなく視線を彷徨わせてから、ふと、父が手に持っている書類袋に気付いた。
下側に書かれているのは……夢ノ咲の校章？
「父上。その書類は……？」
「ん？
……ああ、そうそう、そうだった」
穏やかな笑みを浮かべたまま、父は、僕に袋を差し出した。
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作者名：姫結 | 作成日時：2018年8月28日 13時
