異世界の日常の中の【荒木荘】 (ページ41)

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「……ん？」

ふと、カミュとそこら辺をうろついている途中、道端で泣いている少女を見つけた

「どうした？どっか怪我したのか？」

カミュが話しかけると、その少女は涙を拭いながら震えた声を発した

「足を噛まれちゃったの

凶暴な虎に」

凶暴な虎？

小さな噛み跡からして、ベビーパンサーだろうか

しかし、奇妙だな

ベビーパンサーに襲われたのならひと噛みでは済まないと思うのだが

それに、傷も浅い

まるで向こう側が、途中で戦意を無くしたみたいだ

「ほら、もう大丈夫

痛くないよ」

ホイミで治してあげると少女は泣きやみ、ゆっくり僕を見た

その目は光り輝いている

好奇心が旺盛なのだろうか

「びっくりした……

お兄ちゃん、魔法が使えるの？」

「心を込めて呪文を唱えるんだ

どんな傷でもたちまち治るよ」

にこりと微笑むと、少女は笑顔を見せて立ち上がる

……7歳ぐらいの少女だ

「すごい！魔法使いだ！

お父さんに話さなきゃ！」

呪文を知らない……？

そんな子がこの世に居たなんて……いや、こんなに成長して呪文を見たことがないのはおかしいな……

「グラッツェ、お兄ちゃん達！」

「あぁ

気をつけろよな」

カミュが笑うと、少女も満面の笑みを見せて大きく頷いた

「うん！」

真っ青な目をした少女は、奇妙な色の白黒の髪を揺らしながら道を駆けていく

途中で振り返り手を振ってきたから、僕達も手を振り返した

「……『グラッツェ』？

初めて聞いた言葉だな」

「『ありがとう』って意味だと思うけど……あれ、なんで分かったんだろう？」

「本で読んだとか？」

「あぁ、なんかそんな気がする……」

踵を返し、飛び跳ねる仲間の所へ歩き出す

「イレブン様、カミュ様！こちらです！」

「早くしないと無くなるわよ！」

「凄いわ、シルビアの料理の腕前

どんな病気も治ってしまいそう」

「ふむ……ゴリアテ、いつからこんなに腕を上げたんだ？」

「美味いのぅ！おかわりじゃ！いくらでも食べられるぞい！」

「これが女子力ってやつよ！

さ、イレブンちゃんもカミュちゃんも遠慮しないで！」

邪神ニズゼルファを倒しても、まだ少しだけ旅をしようという話になった

平和な世界が訪れた今、僕達は一躍有名になったのだが

そんな事は関係なしに、ロトゼタシアをうろうろしている

なにはともあれ、また平和な日常が訪れたわけだ