新人声優と最推しさんの恋愛事情 3

288話 ページ47

『ご、ご褒美ですかー…』






ドクドクと心臓が耳許で鼓動を繰り返してるようで自分の声すら聞こえにくい

絡め取られた指に、手に、じわりと汗が滲んでいく。

声が上ずるのを何とも無いフリをして言葉を紡いだ。



「うん、ご褒美」


『それは例えばどんな…？』



いつもの雰囲気が全く感じられない彼に戸惑いを隠せないながらに
一応希望を聞いてみると「聞きたい？」と短く返ってくる

ただ、返事と一緒に妖艶な雰囲気を纏ったまま、おもちゃを貰った子どものような
心底楽しそうな、嬉しそうな笑みも来たのが心配だが…



『ま、まぁ……聞きたいですかね？』


「言ったらすぐにくれる？」


『…この場にあるものなら』


「言ったな？」







あ、やらかしたかもと気付いた時にはもう既に遅くて

彼はその言葉を待ってましたとでも言いたげに妖しく口角を上げる

そのままスッとさも当然のように更に距離を詰めてくるのに
思わず空いてる手を突き出して彼の胸板を押す形で阻む





『ちょっと待っ』


「待たない」



言い終わる前にはっきりと言い切られる

突き出した手も意図も容易く押し戻されてさらに密着する形に


生憎諦めの悪い私は俯いて逃れようとするが

下から伸びてきた手に阻まれてそのまま上を向かせられる




『ん…っ』





貪るようにちょっと乱暴に奪われた唇

想像よりずっと優しくて甘いそれに高鳴ってしまった心臓はとてつもなくうるさいし

思わず溢れてしまった声に熱が顔に集まるのが良く分かる


触れるだけのキスだとしても
それがハジメテだったのは事実で目の前で満足気に自分の唇を舐める
お色気星人をキッと睨み付けた



「そんな顔で睨み付けられてもねぇ」


『…うっさいです』


「かっわいい〜」


『うっさい！！』

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