新人声優と最推しさんの恋愛事情 3

268話 ページ27

…こう言っては失礼かもしれないが
いつもの大人びた振る舞いに比べて到底想像出来ないくらいに
幼い子どものような反応を示す司ちゃん


モソモソと動いてゆっくり起き上がると再び眠そうに目を擦る
小さな欠伸を一つ溢して遠慮がちに俺の服の袖を掴んでから顔を上げた


変な声が漏れそうになるのを堪えて彼女に背を向け
さっきと同じところに腰を下ろす








「……座んないの？」



ウトウトした様子で俺の真横で一向に座る気配を見せない司ちゃんに声を掛ける。
眠気に抗ってはいるようで片目を擦る司ちゃんのトロンとしたもう片方の目と視線が交わる



『……ん』


「あー、はいはい。」



ただ一音だけ発して俺の右隣を指差す司ちゃん

どうやらそっちに移動しろと言う事らしい

特にこの場所に拘る理由も彼女の小さな我が儘？を無下にする理由も見つからないので
素直にコップを移動させてそれから司ちゃんの指差した通り移動する



「はい、どーぞ」


『紀章……さん、膝』


「良いけど

……お前今呼び捨てにしようとしたろ」


『バレたか』


「バレるに決まってんだろ」



逆に何故バレないと思ったのか

さっきに比べまだはっきりと話すようになった司ちゃんが『ギリセーフかなって』と
ふにゃりと笑う。


いや、ギリも何もねぇよ。どう考えても完璧アウトだよ

とは思うもののその笑顔に弱い俺がするのは溜め息を一つ溢すだけ
きっとこうやって尻に引かれてくんだろうな、男って




「つか何で左側？どっちでも変わんなくない？」


『アキレス腱の切れてる方にそんな負担掛けれる訳ないじゃないですか』


「…ホントにキミそういうとこよ？」



……ホントにこれさっき秒寝した子の台詞か？
眠い時って普通そこまで頭回らないだろ


何言ってんですか、とでも言いたげな表情でさも当たり前のように言い放ちながら
ネクタイの結び目に指を入れて左右に動かしするりと外す

その一連の行動がサマになってる上に似合ってると思っちゃう自分が超悔しい
もうホント何なのこの子



『お借りしまーす』


「…どーぞ〜」

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