【エイジ】恋降る雨の日の話。 -Another Story- (ページ20)

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#20 ページ20

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「あ、ねぇ、そこにあるティッシュ取って」

エイジは私の傍に置いてある、

ボックスティッシュを指差した。

(あれ？
何か、普段通りのエイちゃんに戻ってる？)

私は一枚取り出して彼に差し出した。

しかし「届かないー」と言うので、

私は立ち上がり、

彼の目の前に立ってそれを差し出す。

瞬間、エイジにその手を引っ張られ、

視界がぐるりと回転したかと思うと

気づけばソファーの上に押し倒される形になっていた。

「……!?」

エイジの目を見つめながら

状況が飲み込めないまま瞬きを繰り返す。

起き上がろうと手を動かしても

彼によって直ぐに捕まってしまった。

顔の横で両腕を抑えられる。

天井を背景に、視界をエイジが独り占めする。

「え、エイ、ちゃん……？」

戸惑いながら発した声は

掠れてしまっていた。

彼は無表情で、考えが読み取れない。

(何……？何がしたいの？)

両腕を掴むエイジの力は決して強くなくて、

だけど逃れられないのは

少なからず……私の意思なのかも。

(変だよ、私)

こんなふうに真っ直ぐ視線を注がれると

ちょっと、心臓が騒ぎ出す。

「お願いだから─────」

やっと口を開いたエイジの声は

普段とは全然違って、

ひどく切なげに聞こえた。

「そらのとこには行かないで」

ゆらゆらと揺れる瞳に

吸い込まれてしまいそう。

「どういう─────」

意味、と続けようとして。

でも、それは。

─ガチャ……

「ただいま、二人とも！」

場違いなほど明るい声に遮られてしまった。

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