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「じゃあ、やめるの？ 報われないから」
「違う、そうじゃないよ」
首を左右に振った。
エイジの言いたいことは分かる。
いつもみたく励ましてくれようとしてるんだってことも。
でも何で今日は、そんな責めるみたいな言い方ばっかりするんだろう。
感情を揺さぶって、心の奥底をつつくような。
「結局逃げてることに変わりはないじゃん」
一際冷たく言い放たれた。
頭の中で何かが割れたような気がした。
「もうやめてよ。 エイジに何が分かるの？」
声が震えそうになる。
怒りと、悲しみと、とにかくネガティブな感情が私を支配していた。
不安定なそれらは一拍ごとに形を変える。
腹が立ったり、気分が萎れたり。
「私だって本当は、諦めたくないよ。
でも仕方ないじゃん！
そうする以外にどうしようもないんだから」
身を引くのが、そらのためであることも確かだ。
諦めを逃げだと決めつけないで欲しい。
泣きそうになりながら彼の目を見据えていると、彼は小さく息をついて、すっと視線を逸らした。
「……そうかもね」
たった一言、それだけだった。
彼はそのまま歩き去って行ってしまった。
もっと罵倒されるか怒られるかと思ったのに。
肩の力が抜ける。
取り残された私は彼の去った方向を見つめしばらく立ち尽くしていた。
拍子抜けはしたものの、安堵は出来ない。
むしろ心にざわめきを残された。
「そうかもね、って……」
どういう気持ちで言ったんだろう。
エイジにしては随分ドライというか雑というか。
わざと話が終着しないように切り上げられた気がする。
自分から訊いたくせに。
……それか、私に呆れたのかもしれない。
“仕方ない”で片付けたがる私に。
でもそれなら、どうしたら良いって言うの。
傷つけたくないっていう私の思いは、わがままになってしまうのかな。
♢
逃げたのは、弱虫なのは、どっちだよ。
背中にAの視線を感じながら自分に毒づく。
決して振り向かないで歩を速めた。
自分の真意が、自分でも分からない。
二人に望むことも分からない。
彼女の恋路の現状は俺にとって都合が良いもののはずなのに、どうしてそらへの想いを後押しするようなことを言ってしまったのだろう。
A自身、諦める気が強くて、それも願ったり叶ったりであるにも関わらず。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2020年2月15日 8時
