#22 ページ22
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「……先生、
体調悪いんで保健室行ってきます」
弱々しい声が授業中の静寂を破った。
床と椅子の足が擦れる音がして
陸くんが立ち上がった。
「保健委員は……」
先生がキョロキョロと辺りを見回す。
心臓がどきりとする。
私は、おずおずと手を挙げた。
「じゃあA、
保健室まで付き添ってあげて」
「……はい」
私はそう小さく返事して立ち上がる。
─────ところが。
「いい……」
そんな声に止められる。
「一人で行けるから」
陸くんは言いながら、
教室を出て行ってしまった。
ちくり、と心が悲鳴を上げる。
(いいのかな、これで……)
このまま、ただ傷ついて座ったら
これまでと何も変わらない。
同じことをしたんだ。
はじめに突き放したのは私。
─────だったら、
私から行かなきゃいけないんじゃないの？
「付き添い、行ってきます……！」
私は教室を飛び出して
静まり返った廊下を走った。
体調不良で歩く速度の遅い陸くんには
直ぐに追いつくことが出来た。
足音に振り向いた陸くんは
一瞬目を見開いて、顔を顰めた。
「いいって、言ったじゃん……」
「良くないよ！」
時折ふらりと倒れそうになる、
陸くんの身体を必死で支える。
(こんなにふらふらなのに
大丈夫なわけがないよ……)
そう思いながら見つめたとき
少しだけ、陸くんの頬が優しく緩んだ。
*
保健室のベッドに寝ている陸くんの
額にそっと触れてみた。
(すごい熱……)
指先からじわりと熱が伝わってくる。
だけど、彼の寝顔は穏やかだった。
傍にあるパイプ椅子に腰を下ろして
陸くんを見つめる。
「……」
ごめんなさい……。
私はあのとき自分で言った言葉に
すごく後悔している。
今、一分一秒と時が刻まれていくなかで
この瞬間にも
どんどん“好き”が積もっていく。
たとえどんなに冷たく突き放されても
それでも、構わない。
たとえ彼女に嫌われたとしても。
一生、許されなくても。
諦めるなんて……私には出来ない。
はじめから、無理だった。
私は─────誰よりも、陸くんが好き。
もう、揺らいだりしない。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年7月1日 18時
