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びっくりした。
ぐっすり眠っていると思っていたのに、彼の目ははっきりとした鋭さを含んでいて。
その視線が何だか怖かった。
何もかもを見透かすような眼差しが、私を捉えて離さない。
『……お水、飲みますか？』
内心を悟られないよう、笑顔で尋ねる。
『……うん』
エイジくんは短く答えると、しばらく黙って私の動きを目で追っていた。
『どうぞ』
私はそれに気づいていないフリをして、コップに汲んだ水を差し出した。
『ありがと』
エイジくんは私からそれを受け取ると、一口含む。
『A、って言った？』
『……はい』
何を言われるのかと身構えてしまう。
『酒、強いんだ？』
ぎくりとした。
彼らが来る前に結構な缶の本数を空けていたからだ。
強いという自覚はなかった。
お酒は好きだけれど。
でも、そんな印象を与えたくない。
どうして、分かったのだろう。
お酒臭かったのかな？ ……いや、私がそんなミスするわけない。
『そんなことないですよ。 むしろ苦手で……』
私は先ほどのように笑顔で答えた。
動揺を隠すための、仮面だ。
『……ふぅーん、そう』
『……』
率直に、この人苦手だ、と思った。
何を考えているのか分からない。
でも彼は、すべて分かっているように飄々としていて。
ふと、こちらを見つめる彼の視線に気がついた。
私が心で思っていることも、考えていることも、ぜんぶ見透かされているようで居心地が悪い。
『なん、ですか？』
訊いたら負けだと分かっていても、たまらず訊いてしまった。
『別にー』
エイジくんは笑って、一口、水を飲む。
『ただ、何か……そら好みの女の子だなと思って』
……そう、なのか。
頭の中にそらくんの笑顔が浮かぶ。
ちょっとだけ、頬に熱を感じたのは酔っているからだろうか。
『……』
二人きりのこの時間は永遠に感じられて、流れる空気は重く圧迫してくるような錯覚を覚えた。
『見た目もだけど、周りをよく見てて、気配り出来る。性格も良さそう』
と、エイジくん。 彼は実は起きていたのではないだろうか。
彼にそう言われても、褒められているとは感じなかった。
『ありがとうございます』
だけどあくまで私は笑顔のまま、彼を見る。
すると彼は口元にどこか意地悪そうな笑みを浮かべた。
『でも、それがうさんくさい』
『え……？』
心臓がどくん、と音を立てた。
彼を見返す私の目はきっと揺れている。
『わざとらしくて』
エイジくんは相変わらず笑みを湛えている。
何でもないことのように言ってのけ、残りの水を飲み干した。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年9月28日 19時
