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忘れようと思うのに、頭の中は昼間のそらのことばかり。
『いや、Aは違うじゃん』
『だって、友だちだし』
『今は友だちでも、後々さぁ……』
『いやー、たぶんないよ』
私は彼にとって、ただの友だち。
私にとっての彼は、この世の誰よりも特別な存在。
少しも近づけない。
見えない壁があるみたいに、“友だち”を越えられない。
私がどれだけ想っても、届かない。響かない。
この先もそれは変わらない、と、彼自身が言った。
私の想いは強まっても、彼からは一ミリも返ってこない。
エイジには「頑張る」って言ったけど、正直相当苦しかった。
心臓のリズムに合わせるように、刺すような痛みが心に訪れる。
そのたびに周囲の音が遠くなって、目に映るものの輪郭が曖昧になって……。
世界から置いてけぼりにされたような気分になる。
駅を出て歩き出しても、それは変わらなかった。
電車に乗る前には普段通りを装えたのに、時間の経過と共に、現実感がリアルを追い越そうとする。
「次は、二人で飯行ってくれば？ 学食じゃなくてさ」
エイジの声が私の意識を引っ張り上げてくれた。
「それで、お酒の力でも借りて訊いてみなよ。
……何でAじゃ駄目なのか」
それを訊くのは、怖かった。
もしかしたら私のすべてを否定する答えが返ってくるかもしれない。
でも、それを訊かなきゃ前に進めないのも事実で。
「そのときは邪魔しないから」
「……本当に？」
「少なくともそのときは、ね」
と、エイジは笑った。
つられて私も笑ってしまった。
今日は、最初は邪魔しに来たと思っていた彼に救われたから。
もしエイジがあの場にいなかったら、きっと私はそらへの態度も迷って、あれだけ待ち望んでいた彼と二人でいられる時間が苦しくなっていたかもしれない。
だから、邪魔しないでよ、といつもみたいに怒ることは出来なかった。
*
そらとご飯に行って真意に迫ってみろとは言われたものの、そもそもそらをご飯に誘うことが難しい。
なかなか勇気が出ない。
今断られたら、色々勘繰って余計に傷つきそうだ。
そうなればこの恋自体諦めるべきなんだろうけれど、そんなの嫌だ。
かと言って、またの機会に、と先延ばしにしたら、そんな機会は絶対にやって来ないような気がする。
だからやっぱり、今しかない……。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年9月28日 19時
