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「雑誌とかネットで調べまくっただけなんだ」
“モテ”とか“男ウケ”とかって？
「結果上手くいったし、間違いないんだもん」
少し抽象的な言葉だった。
はっきりと口にしたくないことなのかもしれない。
上手くいった、ってことは、それなりに彼女を好くヤツがいたってことだ。
だから彼女の“可愛さ”を装う姿勢は、悪いことじゃないと言いたいんだろう。
勿論、その通りだと思う。
「……ずるい人間だよね」
嘲るように笑うA。
そうやってすぐネガティブになるのは、辛い恋をしているから？
「そらが好きなら、そらだけを追えばいいのに」
思わず呟いていた。
彼女は俺以外の全員に好い顔している。
男子のみならず女子にも。
精神的に相当疲労しているはずだ。
「それが出来ないから、私はずるいんだよ。
……本当、嫌になっちゃうね」
Aは、ふい、と顔を逸らした。
そうやってすぐ感傷的になるのも、辛い恋をしているから？
ホームに滑り込んで来た地下鉄に乗り込んだ。
混雑しているわけではないが、座席が埋まっているので扉の近くに立つ。
「眠たい」
「寝れば？」
「立ち寝という技はまだ習得してない」
と、Aは欠伸した。
「次の駅で席空くといいね」
なんて言っているうちに案内アナウンスが流れ、電車が止まった。
扉が開き、座席に座っていた二人が降りていく。
あ、本当に空いた。 しかも二席分。
乗り込んでくる人もいないようなので、二人してそこに座る。
「寝ていい？」
「駄目って言っても寝るでしょ」
言うとAは、あはは、と笑った。
「正解」
彼女は再び欠伸して座り直すと目を閉じた。
マジで寝る気だ。知ってたけど。
「……」
それから数秒でほんの微かに寝息が聞こえ始めた。
放っておくと、かくかく傾いて倒れてしまうので、向こう側に倒れる前に、俺の肩にもたれかけさせた。
……こうやって黙ってれば、可愛いのに。
俺にだけ態度が違うところとか、一緒にいてもすぐ寝ちゃうところとか……。
男として見られてないんだな、ってつくづく思い知らされる。
友だち以上恋人未満どころじゃない。
友だち以上家族未満くらいだ、たぶん。
とっくの前から恋愛対象外ってことでしょ。
────Aにとっては。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年9月28日 19時
