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「監視カメラの死角か────」
一通り事情を彼に話すと、エイジくんは呟いた。
食堂の方へ歩いていく彼の後を2人で追う。
エイジくんはぴたりと足を止めたかと思うと、いきなり振り返った。
「で、おまえらはこっそり首輪を外してたわけだ」
私とポキくん、そしてエイジくんは向かい合うようにして立っている。
なのに、まるでエイジくんだけが仁王立ちしていて、私とポキくんはその前で正座させられているような、そんな錯覚に陥ってしまう。
「自分たちだけ生き残るために」
「そんなことない!」
私は反射的に言った。
「皆に話したら、それだけバレる可能性が高くなるから」
「確かに、そりゃあそうだ」
私は自分の首輪に触れる。
「1人でもこれを外せたら、助けを呼びに行ける。
……それに、犠牲者も減らせる」
「減らせる?」
エイジくんは私の言葉を繰り返した。
「まず、誰かのを切って……でも首輪はそのままにしておくの。
で、その誰かに皆で投票したら、その人は死ななくて済む」
私はちょうど今日、ヤスリを見つけた後で考えた計画について説明した。
「死んだフリが出来る。
私たちを誘拐した奴らは、死んだと思うはず」
「なるほどね。
死体には誰も注意を払わない。より逃げやすくなる」
彼の言葉に「そう」と私は頷いた。
彼は考えるようにしばらく口を噤んだ。
「……分かった」
やがてエイジくんは言う。
「ならまず最初に俺の首輪を外せ。
拒否するなら犯人どもにバラす」
「ちょっと……!」
彼の口調は有無を言わさぬ強いものだった。
しかし私は不満だった。 きっとポキくんも。
でも、そう言われたら……。
犯人たちにバラされたら、何もかも水の泡だ。
私は反論を飲み込んだ。
「どうする?」
彼が問うてくる。
どっちみち、従うしかない。
私が「分かった」と言おうとしたら、隣でポキくんが口を開いた。
「これは俺たちが始めた」
少し驚いた。
まさか彼が、そんなことを言うなんて思わなかった。
「じゃあやってみれば?」
エイジくんの厳しい声色。
彼に睨まれたポキくんは俯いた。
「おまえが吊られたときに、気づかれないように死んだフリが出来んの?
ここから抜け出して、助けを呼びに行けんの?
きっとおまえじゃ出来ない」
エイジくんは捲し立てるように彼に言った。
ポキくんは目を伏せ、無力感に震えている。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年8月15日 23時