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ギギ、ギギギ、と鈍い音が響く。
首輪の直径はそれほど広くないので、かなりやりづらい。
そっと真上のカメラを見上げてみる。
つられるようにポキくんも上を見た。
「……」
首輪は、反応しない。
やはり、ここは死角なのだ。
犯人たちは、気づいていない……！
ヤスリを持つ手に力が入った。
慎重に動かしていたのを、もっと素早く前後に動かすようにする。
やっぱり、首輪もカメラも沈黙したまま。
「ほら、反応しない！」
言うと、ポキくんが頷いた。
私は自分の首輪から手を離し、彼のに触れた。
彼の首輪を摘むと、ポキくんは私がやりやすいように、首を向こう側に傾げる。
彼の首と首輪の間にヤスリを入れ、擦り合わせる。
先ほどよりもスムーズに削れている気がする。
「自分だとやりづらいけど、これだといける」
「……うん」
ポキくんは少し屈んだ。
私の身長に合わせてくれているのだろう。
それからお互い無言で、私はひたすらヤスリを動かした。
首輪は少しずつ、確実に削れている。
だがなかなか切断には至らない。
腕が随分疲れてきた。
でも、ここでやめるわけにはいかない。
もう少し粘ってみよう。
簡単に諦めちゃいけない。
この閃きはきっと、間違いじゃないはずだから。
それからどのくらい経ったか分からない。
ヤスリを通して感じる手応えが変わってきた。
見ると、首輪の繋ぎ目が荒くほつれ始めている。
「……切れそう。 本当に切れそう！」
気持ちが昂る。
嬉しくて、思わず顔が綻んだ。
あと少し、と私はもう一度ヤスリを握る。
「おい」
と、低い声が唐突に背後から響いてきた。
どくん、と心臓が跳ねた。
私とポキくんはほぼ同時に振り返る。
「おまえら、何してんの？」
そこにいたのは、エイジくんだった。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年8月15日 23時
