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「小3のとき以来?」
という私の言葉に彼は数度頷いた。
……覚えているんだ。 彼は、あのときのことも、私のことも。
謝らなくちゃ。 謝りたい。
ずっと、そうしたくて彼との再会を願っていた。
「あの……」
意を決して口を開く。
しかし、ポキくんは私の言葉を最後まで聞くことなく、すっと目の前を横切って行った。
怒っているんだ。私のことを、恨んでいるかもしれない。
そう思った。
そう思うほど冷たく無感情な横顔で、私はそれに怯んでしまって引き止めることなど出来なかった。
*
私たちは食堂に集まった。
各々、思い思いの椅子に座ったりそばに立ったりしている。
口火を切ったのは赤い髪の男子だった。
「だいたい状況は分かった。
俺たちは拉致されて、命懸けのゲームを強要されてる。
犯人共は俺たちを賭けの対象にしてる」
非現実的な台詞に聞こえるが、これは間違いなく現実だ。
そう割り切らないと、この状況に理屈を求めてもきっと無駄だろう。
「……先に、自己紹介しない?」
沈黙が落ちる前に小柄な女子が言った。
今だとお互いの呼び方何かも分からないし、賛成だ。
「いいよ」と、長身の男子が立ち上がる。
「俺ははじめ。 高校3年」
必要最低限の情報。 それで充分だった。
「AA。 3年です」
私も彼に倣って同じような自己紹介をした。
「堀内陸、1年です」
ノートを抱えていた男子は陸くんというらしい。
「俺はエイジ。高2。 こいつは幼なじみのそら」
と、赤い髪の男子、エイジくん。
そらと呼ばれた男子は最初に椅子を蹴飛ばしたり、怒りを顕にしていた人。
彼は「俺も高2」と補足した。
「トミー。 3年」
体格の良い男子はトミーくんと言うらしい。
「ワタナベマホト、高校3年」
と、黒髪の男子。
「カンタです。 高校3年生」
ぺこりと頭を下げたカンタくん。
「さぁやです……。 2年です」
ふんわりした雰囲気の女の子だ。
「あ、僕はぶんけい。3年」
パックのジュースを飲みながら名乗った彼。
彼はどこか飄々としている。
とても命懸けのゲームを強いられている身とは思えない。
「私は小豆。あーずーって呼んで! 私も3年」
小柄な女子はそう言って微かに笑った。
緊迫して重たくなった空気を払拭しようとしてくれたのだろう。
確かに、ほんの少しだけ軽くなった気がする。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年8月15日 23時