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「……まだ信じられない」
そんな誰かの呟きに、彼はカメラから目を外して勢いよく私たちを振り返った。
「説明で見たでしょ。
外に出ても死ぬ、これを外そうとしても死ぬ、他人に暴力を振るっても死ぬ、カードを見せ合っても死ぬ、死ぬんだよ!」
早口で一気に捲し立てる彼に圧倒される。
彼は言い終えるとわずかに息を切らせていた。
「……その友だちって、どんな人だったの?」
私は少し遠慮がちに問うてみた。
「……金は持ってるけど、中身はクズ」
穏やかそうな見た目とは裏腹に鋭い言葉が飛び出した。
「ねぇ、待って」と1人の男子が声を上げる。
「その友だちがこのゲームをして遊んでて……ってことは、犯人ってこと?」
「それは違う。 あいつはただ遊んでただけだと思う」
長身の男子は否定したものの、どこか自信なさげなのが否めない。
「このゲームをやらせてる犯人は誰なんだよ」
体格の良い男子が尋ねる。
しかし「そんなの知らない」と長身の男子は首を横に振った。
「お前も拉致った連中の仲間かも」
彼の前に赤い髪の男子が歩み出てきて言った。
「それならこんな所いないし。こんなのつけてないし」
と、不機嫌そうに長身の男子は首元に手をやった。
彼自身の首につけられた首輪を指先で摘んでいる。
確かに、と納得出来る的確な返答だった。
このゲームに詳しいけれど犯人側の人間ではないと判断するのに充分な。
赤い髪の男子はそれ以上何も言わなかった。
他の皆も黙って、各々散っていく。
その場に、私とポキくんだけが残った。
気付かず歩いて行く彼の背中を追って「ねぇ」と声をかける。
無視されるかと思ったけれど、彼は立ち止まってくれた。
「ポキくん、だよね」
久々の再会と胸の内を渦巻く罪悪感で、距離感が掴めない。
やけに緊張してしまう。
彼は、私のことを覚えているだろうか。
「……A?」
ややあって、ポキくんが言った。
彼が私の名前を口にしたことで、やはりポキくんだと確信が持てた。
覚えていてくれたこと、嬉しいような、それはそれで苦しいような複雑な感情。
「やっぱそうだ」
小さく笑おうと思ったのだけれど、頬が引きつって上手く笑えなかった。
ポキくんは顔はこちらを向いているものの、一度も目を合わせてくれない。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年8月15日 23時