検索窓
今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:29,823 hit

1-6 ページ6

.



「……まだ信じられない」

そんな誰かの呟きに、彼はカメラから目を外して勢いよく私たちを振り返った。

「説明で見たでしょ。
外に出ても死ぬ、これを外そうとしても死ぬ、他人に暴力を振るっても死ぬ、カードを見せ合っても死ぬ、死ぬんだよ!」

早口で一気に捲し立てる彼に圧倒される。
彼は言い終えるとわずかに息を切らせていた。

「……その友だちって、どんな人だったの?」

私は少し遠慮がちに問うてみた。

「……金は持ってるけど、中身はクズ」

穏やかそうな見た目とは裏腹に鋭い言葉が飛び出した。

「ねぇ、待って」と1人の男子が声を上げる。

「その友だちがこのゲームをして遊んでて……ってことは、犯人ってこと?」

「それは違う。 あいつはただ遊んでただけだと思う」

長身の男子は否定したものの、どこか自信なさげなのが否めない。

「このゲームをやらせてる犯人は誰なんだよ」

体格の良い男子が尋ねる。
しかし「そんなの知らない」と長身の男子は首を横に振った。

「お前も拉致った連中の仲間かも」

彼の前に赤い髪の男子が歩み出てきて言った。

「それならこんな所いないし。こんなのつけてないし」

と、不機嫌そうに長身の男子は首元に手をやった。
彼自身の首につけられた首輪を指先で摘んでいる。

確かに、と納得出来る的確な返答だった。
このゲームに詳しいけれど犯人側の人間ではないと判断するのに充分な。

赤い髪の男子はそれ以上何も言わなかった。
他の皆も黙って、各々散っていく。

その場に、私とポキくんだけが残った。
気付かず歩いて行く彼の背中を追って「ねぇ」と声をかける。

無視されるかと思ったけれど、彼は立ち止まってくれた。

「ポキくん、だよね」

久々の再会と胸の内を渦巻く罪悪感で、距離感が掴めない。

やけに緊張してしまう。
彼は、私のことを覚えているだろうか。

「……A?」

ややあって、ポキくんが言った。

彼が私の名前を口にしたことで、やはりポキくんだと確信が持てた。

覚えていてくれたこと、嬉しいような、それはそれで苦しいような複雑な感情。

「やっぱそうだ」

小さく笑おうと思ったのだけれど、頬が引きつって上手く笑えなかった。

ポキくんは顔はこちらを向いているものの、一度も目を合わせてくれない。



.

1-7→←1-5



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (23 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
370人がお気に入り
設定タグ:YouTuber , 人狼ゲーム
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年8月15日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。