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無言で見返すと、彼は踵を返して屋上から去って行った。
“勝つのは俺”、か。
確かに、唯一の味方を失った俺が勝てる道が見えない。
俺が勝つためには、自分自身と少なくともあと1人がカンタに投票しなくてはならない。
だがこれまでの流れを考えると、狂人であるポッキーや小豆が“人狼かもしれない”カンタに投票する可能性は低い。
もしカンタが本物の人狼なら、吊った時点で狂人側の負けになるからだ。
「……」
俺は柵の方に歩み寄り、少し身を乗り出した。
枯れた芝生の地面。
そこに、仰向けに倒れているAの姿があった。
頭から血を流しているものの、それほど大量の出血には見えない。
死因はやはり首輪による窒息だろう。
トミーとは違って喉を抉られてはいないようだ。
あれはルール違反者へのペナルティなのだろうか。
ふと、彼女の右手に光るものが見えた。
太陽を反射してきらきら輝く何か。
「……あ」
それが何なのか分かったとき、彼女に叱咤されているような気分になった。
簡単に諦めないで。 そう言われている気がした。
『はい』
『何……?』
『人狼は柄の部分で撲殺するかもしれない。
所定の武器で殺害、っていうルールにも違反してない。
だから、持っておいた方が良い』
昨晩の彼女の言葉を思い出す。
俺は、深く息を吐いた。
それから屋上の出入口へ歩き出す。
「……」
諦めない────最後まで。
戦い抜いてやる。
*
夜7時50分。
投票場で、カンタの対面に座った。
ポッキーと小豆もそれぞれ椅子に座る。
「どっちに投票するの?」
2人を一瞥したカンタが尋ねてくる。
ポッキーと小豆のどちらを処刑するか、と訊いてきているのだ。
どちらを選んだところでカンタの勝利は変わらない。
本人は気楽だろう。
……考えろ。
どうにかして2人に、カンタが偽物だと思わせなければ。 カンタに投票させなければ。
Aならどうする?
「俺と小豆は、お互いには投票しない」
おもむろにポッキーが言った。
カンタが眉根を寄せる。
俺も似たような表情になっていたと思う。
「俺たちはお前らのどっちかに投票する」
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2020年6月30日 17時