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「証拠としての状況は説明出来るけど」

「違う。 ……俺がやった。 宣言通り」

カンタに反論する。

まだ考えはまとまっていない。
深くあれこれ追求されたらどうしようか。

道を示してくれていたAはもういない。
そう思うだけでひどく心細い。

「……もう、いい」

ポッキーが呟くように言った。
普段より低くて、疲れたような声色だった。

そのまま部屋を出て行く。
何気なくそれを目で追うと、出入口付近にいたカンタと目が合った。

「……」

鋭い視線を寄越される。

「……」

負けじと睨み返しておいた。
それ以降は何も言わず、黙ってAの部屋を後にするカンタ。

俺はそばに立っていた小豆を一瞥する。
何か言って説得するか一瞬迷った。

でも、白々しいな。 嘘くさい。
一応こいつも経験者を名乗っていた。
余計なことはしない方が良い。

そう判断して、彼女を残して俺も部屋を出た。

その際に振り向いてみると、小豆はもう一度窓の下を眺めていた。



*



朝食をとる気にはなれず、1人で屋上に出た。

「無理じゃん……」

小さく呟く。
1人で人狼を吊るすことなど出来るわけがない。

胸の中に空洞があった。
ちょうどあいつ1人分の空洞。

胸に穴が空いた感じ、とはこういう状態を指すのか。
Aの表情が、声が、自然と蘇った。 朝よりも色濃く。

このゲームの進め方については常に彼女がアドバイスをくれていた。

彼女が先導者だった。 仲間であり、大切な友だちでもあった。

出会ってからそれほど経っていないけれど、そう思えるほど大事な存在だった。

でも、もう彼女はいない。
無理だ。 勝てる気がしない。 勝つ意味がない。

ため息をつきかけたとき、キィと扉が軋む音がして、誰かが屋上に出て来た。

顔を向けると、カンタが歩み寄ってくるところだった。

「“お友だち”死んじゃったね」

少し距離を開けて立った彼が挑発するように言う。

「……」

「A、用心棒でしょ」

「……だから?」

こいつには嘘をついても仕方ない。

俺が村人側だというのは、こいつにとっては不動の事実なのだから。

「狂ったように自分で死んでったよ。
……もう誰もお前を守ってくれない」

鋭利な針の先で心を刺激されているような感覚に陥った。
じわじわと神経が逆撫でられるような。

「勝つのは俺だから」

カンタが強い眼差しでこちらを見据えた。



.

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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2020年6月30日 17時

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