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はじめは私の目を見据え、言う。
「……Aも同じだよ。
イケニエとして、ここにいる」
「私、も……？」
足の下で世界が崩れ去ったような、自分がどことも知れない場所へ延々と落ちていくような気がした。
……おかしい。
こんなことは想定していなかった。
こんな話を聞かされるような流れは。
「お前の父親は、お前をイケニエとして差し出したんだよ。
それで、のうのうとこのゲームを続けてる。
……Aに賭けてるかもわかんないよ」
はじめは真実を話している。
何故か、それがわかった。
「……妹は？」
何とか声を絞り出す。
「妹？」
と、はじめ。
「私の父親は、それ以降は？
新しい、イケニエとか─────」
声が震える。
泣きそうに、喉の奥が痛んだ。
はじめの言うように私の義父がギャンブル狂なら、賭け金の為に私を差し出したというなら、そして更に負けたというなら、その次もあり得る。
別のイケニエを差し出し、更にゲームを続けようとすることも。
……妹はひとつ年下。高校1年生だ。
このゲームに参加していてもなんら不思議じゃない。
気が気じゃなかった。
妹がこんな狂ったゲームに参加させられるなんて、絶対にあってはならないことだ。
あの子に耐えられるわけがない。
「俺の知る限りでは、お前だけだよ」
ほっとした。
直後に残酷な認識が降りてきた。
そんなはずない、と思い他の色々な可能性を考えてみたけど。
「売られた……。 私だけが売られた」
それ以外に考えられなかった。
世界が崩れていく感覚はさっきの比じゃなかった。
どちらを選んでもいいのに、最初のイケニエとして義父は私の方を選んだ。
自分とは血が繋がっていない方の娘を。
その後、金を失ったにも関わらず、彼は二度とゲームには戻らなかった。
……血の繋がった娘を、イケニエにすることはなかった。
「これが俺の知ってる、運営側のすべて」
はじめはそう締めくくった。
隣ではマホトが泣きそうに肩を震わせ「何がイケニエだよ……」と吐き捨てる。
「ふざけんなよ」
彼の怒りの矛先は“運営側”に向けられている。
マホトははじめの胸ぐらを掴み、一度引き寄せた。
「俺たちで遊んでんじゃねぇよ！」
そして、思い切り腹を蹴飛ばす。
はじめはその勢いのまま、建物の外に飛び出た。
虫の羽音のようなモーター音が夜の闇に響いている。
それと、はじめの苦しむ声。
絶望に打ちひしがれる私には、そんなものは何処か遠くに聞こえていた。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2018年3月10日 16時
