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「え……」
指されたのは、自称預言者のそら。
私目線、彼が本物の預言者であることはもう確定しているが。
「え……、わかってる? 俺、預言者なんだって」
そらは、隣に座るてつやに反論する。
「そういうこと言うのってだいたい人狼の人だよね?」
自己紹介のときに受けた印象と何となく変わってくる。
「間違ったらどうしよう、っていう心配がないから、躊躇なく人を攻撃できる─────」
そう続けるそらに、てつやも対抗した。
「違う。
そうやって預言者騙って村人吊っていった人狼見たことあるんだよ」
「俺もそういう人狼見てきた」
「俺は違うって」
ツリメが彼に同調した。
そらは「違う」と繰り返し否定する。
「人狼は嘘をつく!
それがこのゲームの基本だろ!」
「違うって言ってんだろ! しつけえなぁ!」
てつやとそらがヒートアップする。
「落ち着いて!
……いいですか、議論は歓迎しますが感情的な発言は控えましょうよ!」
虫眼鏡が制すると2人は黙り、美希さんは椅子に座った。
刹那の静寂の後、
「1つ訊きたいんだけどさぁ」
と、エイジが虫眼鏡を見て言った。
頼むから余計なこと言わないでよ、と心の中で念じておく。
「そんなふうに目立って、危険だとは思わないわけ?」
「思いません」
虫眼鏡は間髪入れずに答える。
「有能さを示せば処刑されませんし、用心棒に守られる可能性もある。
となると、人狼も中々僕を襲いにくい……そういうことです」
「すげー自信」
エイジが半笑いで彼に言った。
「ねぇ、いい加減気付きましょうよ」
虫眼鏡が前傾姿勢になる。
「村人の勝利には、僕の存在が絶対不可欠なんだよ!」
誰より感情的になっている彼を私は冷たく見つめた。
「────投票の時間」
それまで一言も口を利かなかったはじめが全員に呼び掛けた。
「やだ……、出来ない」
美希さんが両手を握り締め、俯く。
それを見たマホトがここぞとばかりに攻撃し始める。
「そんなこと言って、結局“前回”だって投票してただろ?」
その一言に広がっていく違和感。
「“前回”って、どういうこと……?」
隣に座っている陸がマホトに詰め寄った。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2018年3月10日 16時