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#23 ページ23

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諦めたくなかった。

でも、諦めざるを得なかった。



それがAの幸せなら

仕方がないとも思える。



……わけもなく。



*



休み時間のたびに

隣のAの席にやって来るそら。

(うぜー……)

わざわざ俺に見せつけているのか、と

思ってしまうくらい、

二人は大いに盛り上がっている。



前までは俺だって同じこと出来たのに。

(……あ、まただ)

“前までは”って思うのは

もうやめようと決めたのに。

「……」

休み時間は決まって寝た振りを決め込む。

いっそ本当に寝てしまいたいのだけれど

二人の会話が嫌でも耳に入ってきて

どうしても眠れなかった。



俺って、こんなに意気地無しだったっけ。

瞼を閉じた闇の中で

客観的に自分を見つめてみた。

……今の俺、本当に情けない。

好きな奴に振られたからって

その後“友だち”として接することも臆して

素っ気なくなるのが怖くて避け続けている。

幼馴染みのために身を引く、と言えば

聞こえはいいかもしれないけれど

実際はそんなんじゃない。



ただ自信がないだけだ。

これから先、自分の気持ちを抑える自信が。

もしも感情が先走って

自分の想いを押し付け困らせてしまったら?

……。

……いや、違う。

もっと単純なことだ。

自信がない、というより。



ただ怖いだけ。

もしも以前のように話し掛けて

拒絶されたら、と思うと。

─────それが、怖いだけ。

情けない自分を嘲笑いたくなる。



いっそ、当たって砕けてしまえば

逆に吹っ切れるかもしれない。

「……」

でも。

でも、やっぱり。

『嫌われたくない』

と、思ってしまう。



─────そんな折だった。

「あの……エイジくん」

頭上から聞き慣れない声が聞こえる。

俺は恰も今起きたかのように欠伸をして

「何?」と訊いた。

相手はクラスメートの女子。





そいつは頬を赤らめて

意を決したように告げた。

「ほ、放課後……
この教室に残ってくれない?
あの、伝えたいことがあるの」

「……」

何となく察する。

返事なら今この場でも出来るけど

そんな惨いことされたら

立ち直れなくなるって事を

今の俺は知っていた。

「分かった」

とだけ短く返事をしておく。



ふと視線を感じて隣を見ると

久しぶりにAと目が合った。

「あ……」

彼女は気まずそうにそう呟いて

慌てて俺から顔を逸らした。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 1時

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