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#24 ページ24

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─────放課後。



(やば、早くしないと!)

私は急いで校舎内を駆け抜ける。

教室に忘れ物をしたと気付いたのは

学校を出て5分後くらいのこと。

慌てて取りに戻るけど、焦る頭の中で、

今日の休み時間の出来事がちらついていた。



『あの……エイジくん。
ほ、放課後……この教室に残ってくれない?
あの、伝えたいことがあるの』



あの子の言い方で、

“伝えたいこと”なんて告白しかないと思う。

(急がなきゃ……)

何とか二人が揃う前に

早急に忘れ物を回収して帰ろう。

「……」

階段を駆け上って、無事に教室に着いた。

(まだ、大丈夫だよね?)

教室の窓からそっと中を覗こうとした時。



「私、エイジくんのことが好きです!」



唐突に響いてきたあの子の声。

(わわわ……!)

最悪のタイミングだった。

私は くるりと身体の向きを変え

教室とは反対方向を向く。

どうしよう。

逃げようにも逃げられない。

鞄を抱き締めるように持ち

息を殺して立ち尽くしていた。



「私と付き合ってくれませんか……?」

余程緊張しているのか敬語で話すその子。

(エイジ、どうするんだろう……)

自分から振ったくせに

もやもやと複雑な気持ちが渦巻く。



エイジとはあの日以降、

挨拶を含めた必要最低限の会話しか

しないようになってしまった。

挨拶はともかくとして

そんな必要最低限の会話も

席替えをして席が離れればきっと、

しなくなってしまう。

出来なくなってしまう。



この先も“友だち”でいたい、って

そう思っていたのは私だけだったのかな…。



「ごめん」



低い声が聞こえてきて、

ハッと意識が現実に引き戻される。

「俺、おまえとは付き合えない」

その言葉はストレートだったけれど

意味だけ見れば私も同じことを彼に言った。

「どうして?
今誰とも付き合ってないんでしょ?
だったら─────」

「でも、ごめん。
俺……好きな人いるから」

どきん、と心臓が鳴る。

締め付けられるみたいに胸が苦しくなった。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 1時

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