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「……っ、うぅ……」
それまで黙り込んでいたそらが
声を詰まらせて咽び泣いた。
その様子を見たエイジくんが
消え入りそうなほど小さな声で
「トミー」と呼んだ。
「……ごめん……」
突然の謝罪に戸惑いを隠せないトミーくんは
隣に座っているエイジくんを凝視している。
「俺が────」
エイジくんは誰のことも見ないまま
意を決したような表情になった。
「俺が、人狼……」
歯を食いしばるようにして一旦俯き
再び顔を上げると話し始める。
「俺は、預言者だって嘘ついて
もう一人の人狼告発して……、
それから自 殺しようと思ってた」
全員が彼に注目する。
いつの間にか呼吸を忘れていた。
「そらを守るために────」
そらはさらに深く俯いた。
もうエイジくんに
辛辣な態度を見せることもなかった。
「もう一人の人狼は、」
エイジくんがほんのわずかな時間だけ
逡巡したように間を開けた。
すっ、と腕を持ち上げると
真っ直ぐに人差し指を立てる。
「マホト」
それはあまりに自然に耳に浸透してきて
危うく聞き逃すところだった。
マホトくん……？
ちらりと横目で窺うと
困惑したような顔つきの彼と目が合った。
「俺は、村人……」
戸惑いきった声色だ。
皆に、というよりも、私に向けて
放たれた言葉のような気がした。
こんなとき、疑心を向けられたのが私だったら
きっと間違いなくマホトくんは庇ってくれる。
……ごめん、マホトくん。
縋るような視線を彼に向けられても
私は口を開くことが出来なかった。
────時刻は夜の8時10分過ぎ。
「……せーの」
トミーくんが合図した。
マホトくんに2票────そら、エイジくんから。
エイジくんに3票────マホトくん、トミーくん、そして私から。
腕が鉛のように重たい。
無意識に息を止めていたようで苦しくなって、
腕を下ろすと生ぬるい空気を吸い込んだ。
いつものように椅子を一つ引き抜き
そこにエイジくんが座った。
そらがそんな彼を守るように
傍にぴったりとくっついている。
私は、青酸カリ入りの瓶と
コップ一杯分の水を盆に乗せ運んできた。
「トミー、ごめん……本当にごめん」
正面に立つトミーくんを見上げるエイジくん。
「……分かるよ」
トミーくんは数度頷きそう言った。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
