3-4 ページ37
.
「……ねぇ」
掠れるほど小さな声で呼び掛けられた。
マホトくんは考えることを止め、
真っ直ぐに私を見つめている。
「俺が人狼なのか、村人なのか……聞かねぇんだ」
エイジくんは人狼で確定。
トミーくんは預言者で確定。
人狼がもう一人残っているとすれば
その候補は私、そら、マホトくんのうちの誰か。
私は村人だから、そらかマホトくんだ。
「だって、意味ないから」
と、私は答える。
マホトくんは驚いたように目を見開くと
少しだけ嬉しそうに笑った。
「何か……強くなったね」
今度は私がわずかに驚いた。
「そんなことないよ」
とは言ってもちょっと嬉しくてはにかむ。
「何があったの？」
マホトくんの質問に、
私は目を伏せて小さく息を吸った。
「ここ、外の世界と一緒だと思う？」
「……どういうこと？」
マホトくんが首を傾げた。
「周りを殺さなきゃ生きていけない」
実際に命を奪わなくても、だ。
受験なんかが良い例かもしれない。
ただ、ここではそれが
本当に命を奪わなくてはならないというだけ。
「……外の世界では、
人は人を殺さなくても生きていける」
今度はマホトくんが目を伏せた。
「全然違うよ」
「でも、ここは外の世界と同じかもしれない」
「何で？」
再び彼は首を傾げる。
「人は何かを殺しながら生きていることを
実感出来るから」
結局はその何か、の対象が違うだけなのだ。
彼がわずかに目を見張る。
「……ここを肯定してかないと
やってけねぇもんな」
マホトくんは、何処か切なそうに笑った。
*
投票場のブラウン管テレビは
新品に取り替えられていた。
バキバキに砕け粉々になっていた部品は
ひとつも見当たらない。
私たちの目を盗んで犯人が取り替えたのだ。
それはそれでまた恐ろしい。
だが、些細な抵抗は無意味だと
嘲笑されているような気分になるのが本音だ。
恐怖は次第に腹立たしさに変換される。
投票場には5人が揃っていた。
エイジくんは何も無い宙を見つめて
ぼうっとしている。
そらは両手を握り締め、表情を硬くしていた。
「……トミー」
マホトくんが静かに呼びかける。
「何か言わねぇの？」
「何言ったって意味ないよ」
トミーくんは俯いたまま顔を上げない。
この様子を見ると、
エイジくんの人狼が確定したことは
聞いていないようだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 192人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
