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彼の忠告に構わず、再び毛布を広げ直すと
駆け寄ってきたマホトくんに
腕を掴まれ止められた。
「やめとけ」
「……っ」
身をよじってもがき抜け出すと
何とか毛布を掛けてあげることが出来た。
毛布は彼女の頭までをすっぽり覆い隠し
一見しても死体とは分からず、
凹凸のある何か、になった。
確かに死体という
目印としての存在価値はなくなった。
だがこの判断が間違っていたとは思えない。
私はマホトくんを一瞬見つめて
それ以上何か言われる前にその場から駆け出した。
*
時刻は8時に迫っている。
投票場の円形に並べられた椅子には
既に全員着席していた。 1つの空席を残して。
「このゲームの初回は
話し合いがまったく進まない」
口火を切ったのははじめくんだった。
「どういうこと？」
エイジくんが彼に尋ねる。
「最初は全然情報がないから
誰が人狼か、論議したくても出来ない。
でもゲームが進めば人狼もボロを出してくる」
それ以降は約30分ほど、
ほとんど沈黙が時間を埋めていた。
彼の言う通り、議論にはなりそうもない。
「……」
私はというと主のいない椅子を見るたび
心が抉られるように辛くなって
涙を押し込めるように拳を握っていた。
「あのさ、皆で一斉に指を指すのは？」
マホトくんが全員に向けて提案する。
「埒が明かない」
トミーくんが同意するように頷いた。
「でも、まだ30分もあるよ」
と、そらくん。
「その後殺さなきゃなんねぇんだぞ」
「それに、1回の投票じゃ終わらないかも」
トミーくんにはじめくんが続く。
「……ちょっと、待って」
私だけがついていけていないのだろうか。
もう皆はこの状況を受け入れ、適応しているのか？
「人って殺せるの？」
と、思わず隣に座っていたトミーくんを見て問うた。
彼は一切視線を逸らさなかった。
「殺せるよ。 殺さなきゃなんないんだよ！」
ガタン、と誰かが椅子から立ち上がった。
理沙さんだ。
私の方に歩み寄ってきた彼女に胸ぐらを掴まれた。
「このタイミングで急に出しゃばんないで」
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
