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低い声で言われ、解放されたかと思えば
今度は力強く手首を掴まれ引っ張られる。
抗う間もなく
外へと通じる扉の方に連れていかれる。
(痛い、痛い痛い……)
また後ろで誰かが立ち上がる音がした。
マホトくんだった。
彼が理沙さんを突き飛ばすと
私は彼女の手から逃れることが出来た。
しかし勢い余って床に倒れ込んでしまう。
「棄権しなよ！ あんたの友だちみたいにさ」
理沙さんの怒りが込もった声が上から降ってくる。
「じゃなきゃ、自 殺しろ！」
突き刺さるような怒鳴り声だった。
(……もう、嫌だ……)
俯いて涙を堪える。
何でこんな目に遭わなきゃならないんだろう。
「……投票しよう」
マホトくんがそう言って輪に戻った。
理沙さんも同じように戻って着席する。
「戻ってこいよ」
その場に座り込んだままだった私に
輪の方からトミーくんが言った。
────戻りたくない。
あの椅子に座れば、
誰かを殺す決断を迫られる。
そんなことしたくない。許されるはずがない。
嫌だ、と頭では思っているのに
身体は動き始めていた。
ゆっくり立ち上がると重たい足取りで席に向かう。
「……」
静かに椅子に腰を下ろした。
「いっせーのせ、でお互いを指そう」
と、はじめくん。
……分かんないよ、待ってよ……。
一体誰を指したらいいって言うの？
誰を選ぶのが正解なの？
嫌だ。 やりたくない。
「いっせーのせ」
はじめくんのやや緊張したような声が響く。
心臓が早鐘を打つ。
皆の腕が一斉に上がった。
ギラつく鋭い視線が交錯する。
だけど、私は身体を動かせなかった。
両腕とも膝の上に置いたまま、目を伏せる。
「……何なんだよ、お前は」
トミーくんの苛立った声がした。
それは間違いなく私に向けられている。
再び立ち上がった理沙さんが私の正面に立つと
何も言わずに平手打ちにした。
頬に衝撃が走り、直後ひりひりと痛み始める。
そんな彼女を止めるように押し退け、
カンタさんが私の前に屈んだ。
「全員死んだら、
Aさんが俺らを殺したことになる」
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
