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内海にせっしているこのダーハルーネの町は、世界有数の貿易町として名が知れている。
町長の”ラハディオ”が町を統治しており、更にこの町の開拓者も彼である。
港町として名が売れている他、実はスイーツが有名な観光地でもある。
(…あ)
ふと、足を止める。
ショーウィンドウに飾られた海を想わせるような瑠璃色のドレス。
淡い空色と雲のような透きとおる白の生地が目を惹く。
(素敵なドレス…)
ショーウィンドウのガラスに反射し、自身の服と重なる。お世辞にも年頃の娘が着るには、華やかさに欠ける着古した深い青色のローブ、刺繍でデザインされた白いロングワンピースが映る。15歳の誕生日にシロエから貰ったものだからか、これはこれで愛着のある代物でもあった。
彼女が服屋の前で眺めていると、カラン…と音を立てて、扉が開く。
(綺麗な人…)
真珠のように透き通る白肌と血色の良い薄紅色の頬。エメラルドグリーンの宝石のような瞳。
深紅色の艶のあるふんわりとウェーブがかった長い髪。それを引きたてる装飾品とドレスを見るに、貴族のようだ。
(い、いけない、人様をジロジロ見るのは失礼ね)
ハッと我にかえって、ブンブンと首を振る。
あまりにも綺麗な人だったので、ついぼうっとしてしまった。
(それにしても…さっきから向こうが騒がしいような？)
これから開催されるであろう海の男コンテストの会場には、野次馬のような人集りが出来ていた。
(もう始まるのかしら？それにしては…)
妙な胸騒ぎを感じて、Aは人集りへと向かった。
広場までは大通りを真っ直ぐに行けばすぐそこだというのに、思うように前に進めない。
「そうだ！確かこの下は…」
ヒョイっと大通りの下に流れる水路へと身を乗り出すと、そこにはゴンドラがあった。
(これに乗れば、灯台から裏に行ける！)
彼女は、ゴンドラに乗り込むと、オールを手にして水を蹴った。
ゴンドラが会場の真下近くまで来た所で、手を止める。
(この音、魔法と剣の擦れる音…まさか、この上で戦っているの？)
ゴンドラから降りたAは、急いで会場の方へと走り出す。
灯台の近くまで来た彼女は、驚いた表情で目を見開いた。
(あ、あの2人は…！？)
会場では、数名のデルカダールの兵士が剣を構えている。その切っ先には、グレイグに追われていた茶髪の青い瞳の青年と空色の髪をツンツンとした青年がいた。
「ムダな足掻きはやめるんだな。さあ、おとなしく…」
(ホメロス、さま…)
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作者名：マナ | 作成日時：2020年1月12日 20時
