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自身の後ろにピッタリと張り付くように歩くA。
どこか顔色が悪く、怯えたように警戒している。
(まあ、大体予想はつくけどね…)
シロエは遠く離れた場所を見る。
あおバチ騎兵という兜と槍で武装したメソコボルトが青いハチに騎乗している魔物だ。
メソコボルト単体に関しては、いつもメソメソしていて可愛いと本人は呟いていたので問題ないだろう。
「あおバチも可愛いと思うけどね。飼いならせば乗れるし」
それを聞いて千切れてしまうのではないかと思うくらい、Aはブンブンと首を横に振る。
(魔物が魔物を飼いならすなんて、なんにでも興味を持つAが食いつきそうなのに、こーゆうとこはやっぱり女の子だな)
内心そんなことを考えながらクスッと笑うと、Aは頬を膨らませてシロエのフードを引っ張った。
「あ!」
シロエのフードを引っ張っていた手を放し、突然走り出しすA。
首を押さえながら、シロエは彼女が駆けたほうを見ると、そこにはダックスビルとマドハンドがいた。
向こうもこちらに気づいているようで、シロエは身構えようとした。が、
「見てください、シロエさん!!ももんじゃの色違いです!!」
キラキラと目を輝かせて子供のようにはしゃぐAに、ギョッとした顔になる。
初めて見たわけでもないだろうに、と呆れた。
ももんじゃとは、白い体毛に覆われた身体にトサカが付いており、平たいくちばしと水搔きの付いた足に、細長い尻尾を持つモンスターだ。それの黄色がダックスビルである。
見た目は可愛らしいが、見かけによらず好戦的だ。
「ちょっ!?あぶな…!!」
しかし、彼女をじっと見つめているだけで、襲ってこない。
「ん?あら、マドハンドさん、なんだかいつもより乾燥してるような…?」
そういわれてみれば、どことなく元気がないようにもみえる。
正直、普通のマドハンドと比べても、変わりないようにみえるだろうが。
「あなたもすこし毛並みがゴワゴワしてますね。そういえば、ここのところあまり雨が降っていませんでしたし、果実も十分な栄養がなかったのかもしれませんね」
Aが鞄から小瓶とお菓子のような食べ物を取り出した。
小瓶の液体をマドハンドに何滴か垂らし、食べ物はダックスビルに渡される。
ダックスビルはくんくんと匂いを嗅いで、くるくるとその食べ物を回している。
液体を垂らされたマドハンドは、しばらく動かないでいたが、先程よりもみずみずしくなっているような気がした。
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作者名:マナ | 作成日時:2020年1月12日 20時