表〃裏〃一〃体２

crime#5 ページ9

｢ただいま…。｣




夕方、忠義が帰ってきた。




｢オトン。お金入るのって、明日？｣




｢おん。明日の夕方に振り込まれるで。｣




忠義は夕食のことはなにも聞かず、




静かに宿題を机に広げだした。



すばるも、その横で図書館から借りた絵本を読んでる。



｢よいしょ、｣



俺はなんとか自力で立ち上がり、キッチンに行こうとすると



すぐ忠義が支えようと寄り添ってくれる。




｢大丈夫、宿題しとき。｣



杖を使い、足をひこずりながらゆっくりゆっくり歩く。



冷蔵庫は案の定空っぽやった。




夜になり、俺の膝の上で眠ったすばるの頭を撫でていると




不意に忠義が俺をじっと見た。




｢どした？｣




｢……給食費、払ってへんって本当…？｣




｢っ、…｣




親の間の噂が子供にも回ったんか。




そう言われて、忠義は何て言い返したんやろう。



…何も言われへんか。




｢……ホンマやで。…ごめん、｣




アカンことなのは分かってるんやけど




来年すばるが小学校に上がるための費用とか、




色々ていっぱいで給食費まで回らへん。




｢…そっか。わかった。｣



忠義はそれしか言わなかった。




家の事情を知ってるかる、こんな親父を責めもしない。




｢忠義、こっち来て。｣




近づいてくる忠義を、思いっきり抱きしめた。

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