課外授業【緑橙】

#35 ページ36

｢お待たせしました〜｣




すばるくんが鍋焼きうどんを持ってきてくれた。




｢先生の奢りやから、どんどん食べや？｣




｢先生が生徒にええの？そんなこと、｣




子供のくせに学校的に問題かどうか、って気にするから笑ってしまった。




｢そんなん気にせんの。早く食べな冷めるで。｣




言うと、大倉は食べだした。




食事があくとい胃が小さくなってまうから、全部は食べられへんかったけど、




美味しいって言うて、ふにゃ、と微笑んでくれた。




｢丸、今回はサービスやからタダでええから。｣




片付けに来たすばるくんはそう言って、俺の肩を叩いた。




｢救ったれよ。腕の見せ場やで、丸山先生。｣




｢ありがとうございます。｣




久々に、すばるくんが男前だとすごく思った。




｢じゃあ…。｣




大倉と正対して、これからどうするべきか考え、まずは事情を聞くことにした。




大倉は、学校っていう空間じゃないからなのか、何度も訪問した俺に信頼してくれたのか




素直に話してくれた。




ここ数日、両親は圭太さんがパチンコで儲け、大倉を残して外食ばかりしていること。




お金を盗んでシューズを買った１件以来、関係が悪化していて、家を出るなと言われていること。



そんな中テレビで赤ちゃんポストの存在を知り、藁にもすがる思いで家出をしたこと。




つまったり訂正したり、拙いなりに頑張って説明してくれた。




｢大倉、あのな？｣




残酷やけど、言わなあかん。




｢赤ちゃんポストはな、もっと遠い所にあんねん。しかも、生まれて間もない赤ちゃんしか無理やねん。｣




みるみる大倉の顔が曇っていく。




｢…嫌や…。｣




｢ん？｣




｢あんな家、戻りたく、ないっ…。｣




家を出るなという言いつけを破ったことがバレたら、大倉の身には何が起こるんやろう。




｢外出してんねやろ？今帰れば、まだ間に合うかも…。｣




｢あっ…。｣



不意に窓を見た大倉の顔が強ばる。




｢…圭太さんの、車やっ、…。｣

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