雨の日に虎を拾った【呪術廻戦】

9話 ページ10

「…俺も、聞きてぇことあんだけど。」




緊張した面持ちで、私の方を見たり顔を逸らしたりと落ち着かない悠仁くん。




一体、何がそんなに聞きづらいんだろう…





「あのさ、Aの……」





ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ




『あ…』


「…俺が出るからここにいな。」





タイミングが悪く、悠仁くんは悔しそうにした後ソファから立ち上がって行ってしまった。



私が頼んでいたであろう荷物の段ボールを持って帰ってきた悠仁くんはﾄﾞｻｯと床に置いた。





『ありがとう。』と言って近づけばｸﾞｲｯと手を引かれる。







「……………なんで、A以外誰もいねぇの？」


『え…………あ。』








…そういうことか。


聞きづらそうにしていた理由がわかった。





私が悠仁くんの立場でもきっと同じことを思うだろう。





数日ここにいても、私達以外誰も出入りしないこの家に対して。









『………いないの。』


「え？」




『親、いないの。
兄弟姉妹も、誰もいない。』






その言葉に悠仁くんは苦そうな顔をして俯く。


そんな顔してほしいわけじゃなかったのに…。






『お母さんは私を産んですぐ死んじゃったらしいんだけどね、お父さんは今でもわからないの。


でも、優しい人だったことは覚えてる。
困っている人がいたら放っておけない性分だった。


…そういう面では、私とお父さんは似てるのかもしれないね。あはは…。』






なんとか笑って誤魔化そうとしたけど、悠仁くんの顔が晴れることはない。



どうしよう…悠仁くんが思うほど私は悲しいと思ってないし、全然元気なんだけど……







『…悠仁く、』


「寂しくなかった？」


『…ｯ。
別に、なんとも……』


「俺は一人だと寂しい。
孤独じゃ生きていけない。
家に帰って誰もいねぇって、自分が思ってるより案外キツいよ。」





まるで経験したことのあるような、寂しくて私に語りかけてくるような声だった。



その瞬間、私の知らない何かが内側から込み上げてくるような気がした。




悠仁くんが来てこの家は明るくなった。


たった数日でも雰囲気がいつもと違う。



そう思えるのは、私の見る世界が明るくなったから。






そっか…私は、私の知らないどこかでずっと寂しがっていたのか。






「俺たち、実は似た者同士だったってことか。」


『………そう、みたいだね。』


「これからは俺がいるかんな。」




その温かい笑みは私の心を十分に温めてくれた。

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