雨の日に虎を拾った【呪術廻戦】

4話 ページ5

言い方はアレだけど、例えるならば捨てられた猫のような。




そして何より、わからないあなたの"何か"に惹かれた。






「……………俺、ちょっと面倒くさいもの持っててさ。
今絶賛孤独なんだよ。」



『は、はぁ……』


「だから、嬉しかった。
人の温もりに久しぶりに触れたんだ。」



『ｯ…』






そう言った彼は、眉をハの字にして下手くそに笑った。



あ……この人、笑えるんだ。





その笑顔があんまりにも寂しげで、そして温かいから私の中の警戒心は簡単に解けていった。




諸事情は何なのかわからないけど、私の想像はやっぱり間違ってなかったらしい。






「制服………高校生？ですか？」


『は、はい………一年生、です。』


「え……タメ？
まじか……じゃあ敬語なくていっか。」


『へ………？』


「虎杖悠仁。悠仁でいいよ。
えっと………」






あれ……なんかこの人思ったより……



そこで、私の顔を見ていることに気がついた。


あ……そっか、名前。





『Aです……。』


「そっか、Aか！
ありがとう、A。」


『……いえ。』






………第一印象最悪だったけど。


思ったより、この人は………





「あ…ごめん図々しかった…？」


『そ、そんなことない…です。』






コミュ力高い系男子か…？









.





『…………。』



「何をボーッとしているんだ。」



『これは瞑想です。』





次の日は晴れた。



でも私の心は晴れていない。



先生に教科書で頭をポカッと叩かれても何とも思わない。




窓からボーッと水面が光る水溜りを見つめながら考えていた。







「……………あの、お願いがあるんだけど。」





虎杖悠仁……悠仁くんに真剣な顔をして言われたのは昨日の夜のことだった。




ご飯を食べ終わって、洗い物もして、濡れた悠仁くんの制服も乾いてきた頃だった。






「Aがよければなんだけど……
ちょっとの間、居候させてください…！」




『え…？』






自分でも驚くほど間抜けな声が出た。


彼を拾ったのは私だ。それは変わり用のない事実。




居候……？




『………いいよ。』






なんであんなに早く返事しちゃったんだろう…？！




昨日は目の前で「ありがとう…！」と感謝する悠仁くんを見て、何とも思わなかったわけだけど、今考えればおかしいよね…？




理由も聞かず、出会って数時間しか経っていない男の子を住まわせるなんて、私どうかしてる…。

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