ある日、私にセコムができた【五条悟】

9話 ページ10

「今日からよろしくお願いします。」




目の前で爽やかに挨拶してくれるのは、私とドラマの主演を担当する俳優さんだ。


名前は山本さん。




ひぇ〜…生で見るとやっぱりオーラが違うし、何より顔面が強すぎる。



…顔面だけでいけばあの目隠し野郎もいい勝負してるな。





『よろしくお願いいたします。』




よし、ちゃんと冷静に、笑顔を浮かべて言えたはずだ。



私がお辞儀をして顔を上げると、「せっかくですし、タメで話しません？」なんて緊張を和らげてくれるこの人は、もう全てにおいて強すぎないか？





『はい、よろしくお願いしま……あ、』


「あはは！ちょっとずつでいいと思うよ！」





王子様だ、目の前がチカチカしてまともに見れません。



ほーら、やっぱりお前の心配なんて無用だったんだよ！五条悟！




でも、初ドラマで、しかも主演だから緊張していたのは本当。



これなら上手くやっていけ……





『……？
どうしたんですか？』





そう、さっきから山本さんが私の後ろの方をボーッと見つめている。



私が話しかけたことによって我に帰ると、





「うん…あのさ、この方は？」


『この方？


………ゲッ。』





後ろを向けば、すぐ背後に目隠しをした長身の男が佇んでいた。



ズボンの両ポケットに手を入れて、私達を見下ろしている。




なんでいんのよ…！
来んなって言ったんだけど意味が理解できてないのかしら？！






『あ、あー……この人は…』


「どうもー！
先日からAちゃんのセコムしてます、五条悟でーす！」


『おいコラ……！』


「ど、どうも…？」






そりゃそうですよね。急に、こんな怪しい人に自己紹介されて、しかも私のセコムしてるとか疑うにも程がありますよね。




ていうか、私コイツに怒ってるんですけど、もしかしてわかってないのかな…？！



とにかく、コイツを早く追い出して……






グイッ




「わかってると思うけど、"変な真似"しないでくださいね。」





後ろからグイッと腕を引かれて、五条悟に後ろからニーブラされる。



だけど、五条悟の声があまりに威圧的に感じたから私はすぐに動くことができなかった。






『…馬鹿じゃないですか！なんてこと言うんですか！』



「はいはい、離しますよごめんなさいね。
そんじゃ、僕はその辺で見学してマース。」





いつものようにヒラヒラ手を振ってその場を去った五条悟だけど、やっぱりいつもより雰囲気が違う気がする。

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