ある日、私にセコムができた【五条悟】

14話 ページ15

寝起きのせいか、どことなくボーッとした熱っぽい目を向けてくる五条悟に一瞬気を取られていたけど、



『ご、ごめんなさい！』




我に帰った私は慌てて五条悟から離れ、




ようとした。






ｸﾞｲｯ





『へ…？！ちょ、何やって……』


「なぁに？僕の顔見たかったんでしょ？
……ほら、ちゃんと見なよ。」


『ｯ…』






ソファに仰向けで寝転がる五条悟の上に私が跨っている絵面ほどヤバいものはないだろう。



腰と背中にしっかりと手が回されていて逃げようにも逃げられない。






「ちゃんとこっち見て。」


『………いや。』


「なに恥ずかしがってんの？」


『それはアンタが…ｯ！』


「あ、向いた。」





その瞬間、再びパチリと目が合う。


綺麗な瞳、こんなの見ろなんて無理だよ。



どこまでも吸い込まれていきそうな瞳に逆に怖くなる。






『あの、…もういいですよね。
離してくださ、』



「逃げんな。」






低く、妖美な声が響いた。



そしてそれと同時に、腰と背中に回されていた手に力がこもる。



グッと近づく顔の距離に心臓がうるさくなる。






「顔、真っ赤だけど。」


『これは……』


「そのウブな反応も、可愛い表情も、誰にも見せんなよ。」


『は……』




いつもと雰囲気が違う。


口調も、いつもの穏やかさがない。





……待って、この感じ、やっぱりどこかで……






『……って、何どさくさに紛れて口説いてんだ！
いい加減離しやがれ！！』


「だからやだっつってんじゃん。
あ、おい！暴れんなって！」


『あ、』




そして仲良く2人でソファから転げ落ちた。


私の頭は五条悟が守ってくれたらしく、どこも痛いところはない。




…いや、ダメだって、これじゃあさっきよりも距離近づいてるし、なんならもう抱きしめられてるんですけど。






「…………何も憶えてねーのかよ。」


『え…？』


「……。
あ、なんかお腹すいた。」


『…はぁ？』





私を抱きしめたまま「よいしょ！」と起き上がるとポンポンと私の頭を撫でた後に「クレープ食べたい気分！」なんていつもの調子に戻るし。




『なんなのよ……。』




でも、離れる直前に鼻を掠めたのはやっぱりどこかで嗅いだことのある優しい香りで。



やっぱり私は五条悟のことを全然知らないのだと実感させられた。




それはもちろん、さっきの謎な行動と発言も含めて。





「先は遠いな〜。」


『何ですか？』


「なんでもなーい。」

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