11話 ページ12
実際には10秒未満の間だったと思う。
それでも、私はこの空間の時間の流れが5分ほどに感じた。
それくらい雰囲気が重い………!
誰も口を開かない沈黙を破ろうと口を開けば、「行こう、Aさん。」と山本さんが私の手を取って立ち上がり、歩き出す。
『え、あの……』
あまりにズカズカと進むもんだからどうすればいいかわからず、思わず遠ざかっていく五条悟の方を振り返ると、彼はいつもの笑顔を捨てていた。
「………チッ、面倒くせぇな。」
『…え?』
「Aちゃん、"背後"に気をつけてね〜。」
『……………えぇ??』
怒っているのかと思えば、すぐにいつものような笑顔になるとこれだ。
何を言っているのかさっぱりわからない。
最初、何て言ったのか声が小さくて聞こえなかったけど、二つ目は聞こえたとしても意味がわからない。
背後……?どういう………
「Aさん、」
『は、はい…!』
スタジオに戻ってくるなり、私の手を離すとこちらを向く山本さん。
その顔は一切笑っていない。
「あの人おかしいよ。」
それが五条悟のことを言っているのは明白だった。
『私もそう思います。』
「何か変なことされる前に離れた方がいいと思うよ。」
『は、はぁ……。』
今のところ変なことはされていないし、むしろ助けてくれているだけなのだが、やはり側から見たらかなりやばいのだろうか。
確かに、今後何もされないという保証はない。
ほら、私一応芸能人だし、そういう目的が裏ではあるなら安心はできない、山本さんの言うことには一理ある。
『あはは…考えておきます。』
とりあえず無難に、曖昧な返事を返しておく。
「僕はAさんのことが心配なんだ。」
本当に心配そうな顔をして、私の両手を取るなり包むようにしてぎゅっと握りしめてきた。
わぁ……こんなイケメンにこんなことされていいんだろうか…。
ズズッ………
『え、………?』
「まもなく撮影再開します。」
「よし、それじゃ頑張ろう!」
そう言ってパッと手を離されると力が抜ける。
ほんの一瞬、背中に悪寒が走った。
何か嫌な気配がした。
不安に思ってスタジオ内を見渡すけど、そんな時に限ってアイツはいない。
『…大丈夫、か。』
不安に思ってもカメラの前でそれは許されない。
私は無理矢理笑顔を貼り付けた。
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ちゃっぱ(プロフ) - きのこさん» ありがとうございます…!頑張ります!🔥 (2022年1月20日 20時) (レス) id: 12eaed4cf4 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - 更新楽しみにしております。ファイトです。!(*'▽') (2022年1月20日 1時) (レス) @page44 id: 745e8e7bf1 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃっぱ(プロフ) - れいなさん» この作品に関しては自分もよくわからなくなる時があるくらいなぜ構造が難しいんですよね…(え?)キスシーンドキドキしてくださいました…?!あのプルプルの唇にぜひ蝕まれた…(黙れ)私も大好きなので定期で狼化(?)させてますこれからもします。ありがとうございます^_^ (2022年1月14日 23時) (レス) id: 12eaed4cf4 (このIDを非表示/違反報告)
れいな - どの作品も奥が深くて「早く早く!続きどーなんの?!」ってドキドキしてます!一番ドキドキした所は、……キスシーンですよね?!あーゆー呪術キャラが狼になるシーンホントに大好きです!個人的に山本さん怖いですねぇ…。リアルにいそう…。更新頑張ってください! (2022年1月11日 15時) (レス) id: 26dbc1a5ab (このIDを非表示/違反報告)
れいな - れいなです!「雨の日に虎を拾った」の作品から来ました!ちゃっぱ様の作品がどれも素晴らしいです!個人的に呪術キャラがアタシ好みですしww五条先生の作品の中でトップレベルに好きな作品です!こんな素敵な作品達を作れるちゃっぱ様はどうなってるんですか?!ww (2022年1月11日 15時) (レス) id: 26dbc1a5ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃっぱ195 | 作成日時:2021年8月26日 18時