水槽に迷い込んだ貴女Ⅱ【Fischer's】【短編集】 (ページ49)

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『幼馴染み(4)』シルク×幼馴染みページ49

シルクside

コートのポケットの中で依然手は繋がったまま、俺たちは家路につこうとして信号が青になるのを静かに待っている。

『…シルク、』

か細い声で呼ばれた名前に横を向くと、またマフラーに顔を埋めたAが続ける。

『私と今いて、その……っ、もし彼女さんとかいたら本当に申し訳ないし、ファンの人にも悪＿＿＿』

シ「＿＿＿＿俺幸せだったよ」

『へ？』

ポケットの中で手が離れていこうとしていたから、俺は被せるように言った。

シ「彼女なんていねぇし、俺が繋いでいたいの。……もう、離したくねぇの」

俺はAに向き直って、でも手は繋いだまま。

シ「俺、Aの事がずっと好きだった。幼馴染みだからって思って学生の時言えなかったけど、すげぇガキの頃からずっと。Aが隣に引っ越してきた時、運命なんじゃないかって思った」

『っ……うんっ』

シ「その時、あぁ俺まだ好きだな、とも思った。俺はこの先色んなことに挑戦してくことになると思うけど、その結末を俺の隣で、すぐそばで一緒に見届けてほしい」

『…ふっ……うん…っ、』

今にも泣き出しそうな彼女を前に、俺は微笑みながら続ける。

シ「俺がAを幸せにする。俺に、お前を幸せにさせてほしい。俺と、付き合ってくれませんか？」

『…ふぅっ…うん、うんっ……！』

ポロポロと涙を零しながら何度も何度も頷くA。俺は彼女を引き寄せてぎゅっと抱きしめる。

シ「だから、俺は今日幸せでした。大好きな人と過ごせて」

『私も……すっごく幸せでしたっ…！』

シ「あと、マフラーが赤なのもちょっと嬉しかったりします」

『じ、実はちょっと意識してたりします……！』

シ「……マジ？」

『昼間友達と今日着る服選びに行ったら、その子がシルクの色は赤だから赤の物つけてったら喜ぶんじゃない？って……』

シ「…すっげぇ似合ってるから、ずっと使って」

ふふ、と照れたように微笑んだ彼女の体を離して、家まで送るよと冗談めかして言えば、隣でしょと返ってくる。そんな小さなことが今は凄く幸せだった。

俺がイタズラで彼女の頬に手を添えてゆっくり顔を近づければ、急にあたふたしだして「ま、まっ、まって…」と焦り出す。

『まってっ…てばぁ…』

その顔は真っ赤で、近づく俺の顔にギュッと目を瞑り唇を固く引き結んだ。しかしいつまで経っても唇にその感触が来ないと目を開けて

『もうっ！いじわる……』

知ってるか？俺にはこんなに可愛い幼馴染みがいるんだぜ？