水槽に迷い込んだ貴女Ⅱ【Fischer's】【短編集】 (ページ48)

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『幼馴染み(3)』シルク×幼馴染みページ48

シルクside

季節は移り行き、街はイルミネーションに彩られているこの頃。

＿＿＿今夜、今からお出かけの約束がある。お出かけと言ってもAがお買い物がしたいと言っていたからゆったり街を歩くくらいだが、それでも好きな人と2人きりでのお出かけは嬉しいのだ。

正直今の関係も心地よくて、固めた筈の決意が揺らいでしまいそうになる。だが、こうとも言える。

＿＿＿＿今の関係が心地いいなら、恋人同士になれたらもっといい、最高じゃねぇか。

俺は少し緊張した笑みを浮かべて家を出て、キャップとコートを着直して気合を入れた。頬を吹く風は冷たく、マフラー付けてくればよかったと少し後悔。

待ち合わせは最寄りの駅。家が隣だというのに、と思うかもしれないが、彼女は前に予定が入っているらしく、電車で帰ってきたらすぐ行こうと言われてこうなった。

悴む手を擦り合わせて彼女が来るのを待っていると、後ろから肩を軽く叩かれて、振り向くとAがお待たせ、と微笑んでいた。

シ「おう、行くか」

ベージュのコートに赤いマフラーをしてたのが、意識してるわけじゃないのは分かっていても嬉しくて、思わずニヤけそうになる。

『あ、この服かわい…』

しばらく買い物でぶらつきながら歩いていると、ふと思う。Aの彼氏になったらこんな感じなのだろうなと。そう思ったら今すぐにでも想いを伝えたくて、ポケットの中でぎゅっと拳を握りしめた。

ショーウィンドウ越しに服を眺めるAだが、値段的に断念したようで眉尻が下がっている。そんな表情が可愛くて悪戯心が働く。

そっと彼女の頬に冷えた指先で触れれば、彼女は「つめたっ」と勢いよく振り向く。そして触れたのが俺の指先だとわかるとマフラーで顔の下半分を隠してしまう。

シ「っはは、ごめん、ついw」

『ついって……もう、お返し！』

頬を膨らませてそう言ったかと思えばぐっと背伸びして俺の首に触れてきた。おかげで距離が近い。鼓動も速くなり顔に熱が集まる。

シ「冷めてーからもう離せっ」

1歩後ずさって彼女の手首を軽く掴むと、大人しく離れていくA。楽しそうにケラケラと笑いながら両手を合わせて温かい息を吹きかける。

俺はAの俺側にあった手を掴んで繋ぎ、強引にポケットに入れた。

『へ、わぁっ』

シ「手、すげぇ冷たかったから…、これで暖まるだろ？」

肩がぶつかりそうなほどその距離は近い。彼女の頬もみるみる赤く染まっていき、

『ん…』

俯き加減で小さく頷いた。