水槽に迷い込んだ貴女Ⅱ【Fischer's】【短編集】 (ページ47)

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『幼馴染み(2)』シルク×幼馴染みページ47

シルクside

“幼馴染み”という存在はどうしてこうも難しく面倒なのか。

外の木々は青々と茂り太陽はかんかんと照りつけていて、一言で言うと暑い。つい先日学生さんたちは長期休みに入ったようだ。

今マサイの部屋でくつろぎながら編集しているこいつらも幼馴染み。隣の家に住むAも幼馴染み。同じ幼馴染みのはずなのに、相手に抱く感情はそれぞれ違っていて。

「幼馴染みは恋愛対象にはならないよ〜笑」

中学時代、いつかのクラスの女子達がそんなことを話していたっけ。それを偶然耳にした俺は、確か想いを告げる事を断念したんだ。

今思えば後悔しかない。好きな奴が話していた訳でもないのに、そいつのことになると弱気になってしまう俺には、勇気が出せなくて。結局卒業まで彼女に伝える機会すらなく俺の恋は終わった。

そう、終わったはずだった。

『こんばんは、先日隣に越してきたAです。ご挨拶に伺いました』

隣に越してきたとAがやってきた時は本当に驚いた。メンバーが来たと思って出迎えたから凄い格好をしてたような気がするが、彼女は表情一つ変えず、学生時代から変わらない柔らかな笑顔を俺に向けた。

彼女も俺だと最初気付いていなかったようで、俺が名乗れば大きな瞳を丸くして驚いていた。その後ほんのり頬を赤くして、これからよろしくね、と微笑んだのだ。

……お察しの通り、その時俺はもう一度彼女に恋をした。彼女の笑顔があまりにも俺の心臓を揺り動かすから。

だけど冒頭でも言った通り“幼馴染み”という関係が、いつかの女子たちの会話が俺を縛り付けて、彼女が越してきてからもう1年が経とうとしているがまだ告白もできていない。

せめて、と出掛けないかと時々誘ってみたりはするものの、お互いに忙しいこともあってまだ一度も行けていない。その度に寂しそうな表情をされるから期待してしまう。もしかしたら彼女も楽しみにしてくれてるのではないかと。

姿を見かければ必ず声をかけるようにしているが、Aは仕事で疲れていても朝早くても話に付き合ってくれる。以前より会話も増えて、なんだか学生時代に戻ったみたいなドキドキ感が心地よい。

＿＿＿＿今更遅くはないだろうか。

当時は周りに囃し立てられたり噂されたりしていて、俺も自惚れて若干そんな気がしてた時期もあった。

もし本当にそうだとしたら今更遅い。というかあいつにも彼氏がいるかもしれないのに。だけど、

＿＿＿＿後悔だけは、もうしねぇよ。