水槽に迷い込んだ貴女Ⅱ【Fischer's】【短編集】 (ページ32)

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『俺の彼女になれよ(3)』シルク×先輩ページ32

Aside

あれから結局、先輩は私の家までついてきたのだ。

母が先輩のことを彼氏だと勘違いしちゃって大変だった。先輩も先輩で、彼氏面しちゃうから余計に面倒なことに。

しかも私たちを気遣って家を出てしまった。

シ「やっと2人っきりだね」

そういうことばっかり言って。その所為で私はシルク先輩のファンからの視線が痛いのに。

シ「考え事。俺といる時は俺のことだけ考えててよ」

『……私は先輩の彼女じゃありません』

＿＿＿＿＿＿＿シ「じゃあ今から俺の彼女になれよ」

先輩は私の手を握って言った。いつもの語尾の柔らかい優しい口調ではなく、初めて聞いた命令口調から先輩の真剣さが伝わってくる。

『……私、後輩ですよ』

シ「俺は本気でお前の事が好きなの」

握られた手から伝わる熱が、私の心臓を掴んで離さない。

シ「先輩とか後輩とか周りの目がどうとか関係ねぇよ。俺はAが好き」

『……私今までこんなに冷たくしてたのに、ですか…？』

シ「けど最終的には俺のワガママ聞いてくれてるじゃん。一緒に帰りたいとか家行きたいとか」

先輩と私の指が絡み、心臓の音が速まってる自覚がある。

シ「ごめん、ちょい恥ずい」

そう言うと先輩は私を後ろから抱きしめて、私のお腹に腕を回してぐっと引いた。

シ「A、俺と付き合ってほしい」

『でも……、わかんない……』

シ「俺にこうされて、嫌？」

嫌……じゃない。背中の温もりが心地よくて、温かくて、微かに先輩の心音も伝わってくる。すごくドキドキしてる。先輩も私も。

『嫌じゃない、です』

シ「じゃあ、俺がキスしたら、嫌？」

きっと……、それも嫌じゃない。キスとかしたことないけど、初めてが先輩でも嫌じゃないと思う。

『たぶん……嫌じゃないです……っ』

シ「もっかい言うよ？………A、俺と付き合ってほしい」

気持ちに気づいてしまえばそれは涙と共に溢れて止まない。嗚咽混じりに答えたくなくて、代わりに何度も頷いた。

私は先輩と向かい合うように座り、泣き顔を見られたくなくて先輩に抱きついた。

『嬉しい、です……っ』

シ「ふふ、俺も」

先輩は優しく涙を拭ってくれて、微笑みながら頭を撫でてくれた。私もつられて笑うと、少し驚かれた。

シ「笑ってんの初めて見た」

『じゃあこれからは先輩がいっぱい笑わせてください』

シ「お、任せとけ？w」

『ふふっ、』

私も、先輩の笑顔好きですよ。なんて、言えるようになるのはもうちょっと先かな。