水槽に迷い込んだ貴女Ⅱ【Fischer's】【短編集】 (ページ27)

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『9月3日』モトキ×恋人ページ27

モトキside

『ねぇねぇ、明日何の日だと思う？』

モ「えー？ちょっとまってねー？」

寝転がってスマブラに熱中していた俺の隣に、Aは同じ体制で並び尋ねた。俺はキリのいいところでコントローラーを置いて彼女を見た。

モ「明日が何の日って……今日が9月2日だから、明日は3日でしょ？』

『そ。9月3日は何の日だと思う？』

Aは再度尋ねた。

9月3日。そう聞いて俺はこれしか思いつかないのだが。

モ「わかった！グミの日でしょ？俺がグミ大好きだから聞いてるんでしょー」

『ぶー！残念違いまーす』

モ「え、違うの？」

てっきりそうだと思っていた俺はキョトンとなってしまう。実際に明日はグミの日だとネットニュースに書いてあったのだ。だから俺は明日の朝一番にコンビニで大量のグミを購入するつもりだ。

『他にあるでしょ、もっと大事なの』

モ「えー？グミの日とAの誕生日とクリスマスと記念日しか大事な日思い浮かばないよ？」

『全部ハズレ。よーく考えればわかるはずだよ？』

俺が正解のものを思いつかないからか、Aは足を軽くばたつかせて俺の顔を覗き込む。

『早くしないともう3日になっちゃうよー』

モ「わかんないよー。正解は？」

『んふふ、知りたい？知りたい？』

まるで母親に褒めてもらいたがってる子供みたいだな、と彼女の姿をそんな風に感じる。知りたい、と言えば満面の笑みでこちらを見つめてくる。

しばらく時計の秒針の音のみが聞こえる静けさの中、割かし好奇心旺盛めな俺は早く答えが知りたくてうずうずしていた。

そしてAが息を吸おうと唇を開いた瞬間、＿＿＿＿＿＿＿＿

ポロッポーポロッポー

日付を越した合図として、時計の中の鳩が出てきて鳴き出す。

それと同時に開いていた彼女の唇が音を、言葉を紡ぐ。

『モトキ。25歳のお誕生日、おめでとう』