水槽に迷い込んだ貴女Ⅱ【Fischer's】【短編集】 (ページ17)

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『相乗りの帰り道』マサイ×恋人ページ17

マサイside

『あの…マサイくん、今日一緒に帰りませんかっ……』

付き合って1ヶ月のウブで可愛い彼女。制服のスカートの裾を握って、顔を赤く染めて言ってきた。

同級生なのに、未だ敬語が抜けていない。

マ「いいよ、帰ろ！」

俺が不慣れながらに手を差し出せば、困ったようにあたふたして、控えめにその手を取った。

マ「Aは歩いて帰ってるんだよね」

『う、うん！マサイくんは自転車ですよね…？だから帰り誘うのすごく迷ったんだけど……』

心なしか繋いだ手に僅かに力が入った気がする。照れているのだろう。

マ「すげぇ嬉しかったよ？w」

『だって歩かせちゃう……』

マ「どうせ駅までじゃんw」

俺は自転車通学でAは徒歩。学校の駐輪場まで行くまでに、俺は少しゆっくり歩いて時間を長引かせる。

マ「……俺の後ろ、乗ってく？」

『……へっ？』

マ「あ……、やっぱ今の無し…!!後ろにA乗せても怪我させたくねぇし……」

『ぇ……っ、したい…です、2人乗り…』

マ「……え、嘘」

「嘘じゃないです……！」と恥ずかしそうにぶんぶんと頭を横に振るA。

いつの間にか長引かせていた時間も限界を迎え、駐輪場へ着いてしまっていた。

マ「じゃあ、ちゃんと掴まっといてよ？」

俺は自転車をスペースのある所へ出して、サドルに跨った。続けてAも自分のスカートを押さえながらそーっと後ろに跨った。

マ「いや、そんなんじゃ振り落とされるよ？w」

俺のお腹に彼女の手が回ることはなく、背中にそっと添えられただけだった。

マ「ほら、お腹に手回して」

『は、恥ずかしい……』

そう言いながら恐る恐る回った細くしなやかな腕。「もっとしっかり」と意地悪く、彼女の手首を掴んでバックハグのようにさせれば、彼女は耳まで真っ赤にした。

身体が密着していて、Aの体温が間近で感じられた。熱く、柔らかい。

トクン、トクンと規則正しかった鼓動が、急速に速まっているのがわかる。

マ「緊張、してんだ」

『ぁ、当たり前です……！』

マ「……耳当てて、俺のも聞いてみ？」

Aは言う通り耳を俺の背中に当てて、心臓の音を聞いた。

トクン、トクン、トクン。

大きく、速く鼓動が鳴り響いている。

マ「お前だけじゃなくて、緊張してんのは俺も一緒…」

『っ……//』

マ「なぁ、A」

俺はAの名を呼んだ。

『なんですか…？』

マ「好きだ。」