水槽に迷い込んだ貴女Ⅱ【Fischer's】【短編集】 (ページ14)

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『珍しく』シルク×恋人ページ14

Aside

シ「ただいま……」

『あ、おかえりー！』

今日は一日中外での撮影なんだと、今朝元気に家を飛び出していったのが鮮明に思い出される。

『かなりお疲れのようだね～、顔真っ赤だよ？w』

彼の顔は真っ赤で、額には汗が滲んでいる。

シ「うん……疲れたぁ……」

へにゃぁ、と微笑むシルクだが、どこかおかしい。違和感がある。

でもそれが何なのかわからなくて言えない。

シ「……はぁ……っ、はぁ……A…っ」

『う、ぇ？』

フラフラと覚束無い足取りで彼は私に近づいて、力なく私の肩を掴んだ。

『しる、く…？』

私が名前を呼んでも彼からの返事はなく、ただ荒い呼吸を繰り返すばかり。目は合っているはずなのに、どこか虚ろで焦点があっていない。

そしてまただんだんシルクとの距離が縮んでいって、ぎゅっと抱きしめられた。のも束の間、

シ「ぅ＿＿＿＿＿＿」

ふっ、と一気に力が抜けて、抱きしめた形のまま私に凭(もた)れかかった。

『ふぇ!?シルク！どうしたの!?』

彼の様子に全神経を傾けると、あることに気がつく。

赤い頬、額や首に浮かぶ大量の汗、荒い呼吸、そして何より密着した身体がとても熱い＿＿＿＿_。

『…シルク、もしかして風邪引いたんじゃ……？』

シ「……かもしんねぇ…」

『熱中症かな……、今日何の撮影したの？』

シ「最初…、っ、水風船…やって、めっちゃ濡れて……、は……っ、そのままアスレチック鬼ごっこした……はぁ…」

『そりゃ風邪ひくよもう……！』

とにかく、早くシルクを寝かせなければ。そうは言っても私は女で彼は男。体重差も大きすぎる。

『うぅ…、お、もい…！』

シ「…ごめん、ほんとに迷惑ばっか…」

『しょうがないよ、シルクは撮影頑張ってるもん』

半ばシルクを引きずるように寝室まで運び、ベッドに寝かせた。

『シルクが風邪引くなんて珍しいね』

シ「俺もあんまり風邪引いたことねぇから…、結構きちぃ……」

『とりあえず汗だくだから体拭くね。自分で脱げる？』

私はタオルを濡らしてこようと立ち上がる。自分の腕を額に乗せて、シルクは言った。

シ「……脱げねぇって言ったらどうすんの？」

『っ…、脱がしてあげるしかないでしょバカ…！』

シ「……じゃあ、脱げねぇ」

『……今日はシルクは病人だから……！…特別、だからね』

恥ずかしいのを隠そうとそっぽ向いてそう言った私に、彼は言った。

シ「はぁっ……、お前…ほんとにかわいいな…w」