水槽に迷い込んだ貴女【Fischer's】【短編集】

『傍にいる』マサイ×親友 ページ13

マサイside


＿＿＿最近、俺はAの様子がおかしいと感じることが多々ある。

具体的にどこが、と言われれば答えに迷うのだが、毎回共通して思うことは、無理して笑っているようだということ。



成績も優秀で真面目な性格であり、クラス内では学級委員、部内では部長をやっていて、疲れないはずがない。

マ「なぁ、最近お前なんか無理してね？」

『え……っ、何、急に。全然してないよ？』

放課後、俺がそう尋ねると、ほんの一瞬だけ戸惑いの表情を覗かせたが、すぐにいつもの顔に戻してしまう。

マ「嘘つけ。無理して笑ってんだろ？俺には分かるんだぞ。」

『ち、違うもん！ほんとに、大丈夫だから…！』

俺は自分に背を向けてその場から離れようとするAの手を掴む。

＿＿＿しかし、その表情がやけに悲しげで、思わず掴んだ手を緩めてしまった。

『…ごめん……。』

呟き、行ってしまった。その言葉が意味するものが理解出来なくて、それが心に引っかかる。

下校中にでもちゃんと話をしようと一旦教室に戻ると、不意に耳に入り込んできた言葉。

「やっぱりAちゃんって何でも出来て凄いよね。憧れちゃう。」

「何かあった時はAちゃんに頼めば何とかなりそう。」

「学級委員にこれ聞いてくるわー」

何となく聞けば、ただ単純にAが褒められていて喜ばしいことなんだろう。

だって、こんなにいつでも何でもこなすような人が、頼られないわけがないんだから。



＿＿＿＿だが、これが重荷となってAにのしかかって、潰されそうになっていたとしたら。



＿＿＿＿周りから期待されて、それと同じかそれ以上の成果を出さなければいけないと自分を追い込んでいたとしたら。



＿＿＿＿失敗したら「珍しいね」なんて言われて、それが更にプレッシャーになっていたとしたら。



そんなものは褒め言葉としてではなく、刃物となってAの心を切り刻み続けるだろう。

マ「＿＿まだどっかにいるよな…？」

向きを変えて俺は走り出す。どこへ向かったのかもわからないが、無我夢中であの姿を探し求めた。

『傍にいる(2)』マサイ×親友→←作者です！

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