17 ページ17
仕事が終わってもワタルの姿は無く、俺は一人で家に帰る事にした。すっかり暗くなった道を一人で歩く。
「ねえ、キミがフジガヤ・タイスケ？」
一人の黒い服を着た男性の横を通り過ぎようとした時、突然声を掛けられて反射的に止まって相手を見てしまった。
「…貴方は？」
「俺はユウタ。わったーと同じ死神だよ」
にこりともせずに俺を見て自己紹介をする。
「…死神が、何の用だよ」
頭の中で警笛が鳴る。逃げろと、激しく訴えかけてくるのに、足は地面にくっ付いたみたいに動かない。
「わったーに代わって、キミの魂を奪いに来たんだ」
「な、んで…」
魂を奪う？
俺の命日は、今日？
ワタルはそんな事言ってなかった。
「わったーってね、ああ見えて凄い落ちこぼれなんだ。今まで一度も魂を回収出来た事がないの。なのに、ペアを組む事を嫌がっていつも単独行動。今度こそって、この仕事を任されたのに、わったーはキミの未練の為にって神術使ってる。これじゃあ、またキミに情が湧いて魂を回収出来ない。だから、俺がキミの魂を奪って、命日まで預かろうと思って」
そう言って、一歩また一歩と俺に近づいて来る死神から逃げるように後退る。
「冗談じゃない。お前になんか、くれてやらない」
死ぬのが怖くないって言ったら嘘になる。それでも、こんな見ず知らずの死神になんか奪われるくらいなら、俺はワタルに______…。
「ユウタ！何やってんだ！」
突然後ろから声がして振り返ると息を切らしたワタルが立っていた。
「…ワタル」
「あーあ、見つかっちゃった」
戯けた声で俺から離れた。
「太輔、ごめん。何もされてない？」
「平気…」
ワタルは心配そうに俺を覗き込んで、ユウタと名乗った死神から庇うように俺を背中に隠してくれた。
「ユウタ、何勝手な事しようとしてるの？」
「だって、このままじゃわったー……！」
「黙れ！！」
聞いたこともない大声でワタルはユウタの言葉を遮った。
「っ…」
「ユウタ、帰って」
見た事も聞いた事も無い怒りを含んだ目と声で威圧する。俺は何も言えずにワタルの背から二人を見た。
「ねえ、キミはどうして、自ら命を絶った人間が死神になるんだと思う？」
「それ、は……」
「答えは簡単だよ。罰なんだ」
俺は口籠った。
ワタルも言っていた、これは罰なんだと。
命を粗末にした、生きる事を諦めて逃げ出した人への罰なんだと。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 150人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
琥珀 - はい！！絶対に読みます！！ってゆうか、読んでます(笑) (2015年5月6日 23時) (
レス) id: 81fa3df666 (このIDを非表示/違反報告)
ナツ(プロフ) - 琥珀さん» コメント、ありがとうございます！楽しみにしてくださって、本当に嬉しいです。頑張りますので、引き続き読んでくださったら嬉しいです！ (2015年5月6日 15時) (レス) id: 169b65b4ce (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 頑張ってください！！続き、楽しみにしてます！！ (2015年5月6日 14時) (レス) id: 652e9fb3ab (このIDを非表示/違反報告)
ナツ(プロフ) - 海樹さん» 此方にもコメントありがとうございます！凄く励みになります。ゆっくりになるとは思いますが、更新頑張りますので、これからも読んでいただけたら嬉しいです^ ^ (2015年4月18日 19時) (レス) id: 169b65b4ce (このIDを非表示/違反報告)
海樹(プロフ) - 少ししか読んでないのに、文章がスーと頭に入ってきて自然とイメージを膨らませてくれました！ 文章がとても綺麗で、芯がありながらも優しい雰囲気を感じました☆ 更新楽しみにしています(*^^*) (2015年4月18日 19時) (レス) id: 8dd0998254 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ナツ | 作成日時：2015年4月18日 13時
