2曲 転校しました ページ3
「××高校より転校してきました湊本空です。本日からお世話になります」
目覚めは最悪だった。なんせ転校前の高校での風景を数時間で一気に脳内再生され見せつけられたのだ。胸糞悪い。いつも通りに身支度をし、真新しい制服に身を包んで家を出た。電車を乗り継いで到着したのは大手アイドル養成高校「夢ノ咲学園」。私は今日からここで、プロデューサーをするらしい。普通科に希望を出したら、アイドル科で試験的にプロデューサーをしないかと提案の手紙が返ってきた。断る理由も無かったので受けることにした。
「そんな畏まんなくていいぞ。俺は佐賀美陣、基本保健室にいるからな」
「はい」
「・・・なぁ、その前髪目に入らねぇのか?」
「大丈夫です」
「なら良いけど・・・何でそんなに顔を隠すんだ?」
おおう、結構ずけずけ来る先生だな。前の高校も、その前も、私の見た目に突っ込んでくる先生はいなかった。「暗い子来たなー」としか思われてなかっと思う。あとは、いじめられっ子とか。
「自分の顔、大っ嫌いなんです。家族に似てるから」
「そんなに?」
「私の人生無茶苦茶にされたようなものですから」
なるべくマイナス方向の言葉をチョイスしておく。そうすれば、ほとんどの人間は詮索を止めて引き下がる。この先生も同じだった。教室に向かう道のりは結構長く、その間に私より先に転校してきた「あんず」というプロデューサーについて聞いた。同じ二年生で、今はtricksterというユニットメンバーと一緒にいることが多い。無口だが努力家で頑張り屋さん。素直な子。聞けば聞くほど彼女が自分と正反対の存在だと思えてきた。
「お、着いた。ここがお前のクラス、2−Aだ」
佐賀美先生が指さした扉。そこが、今から私が死ぬ気で三原則を徹底して生活する空間になる。今度こそ、身バレせずに穏やかな学校生活送れますように!!
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