プロローグ弍 ページ2
目を覚ますと、知らない御屋敷の一室で横たわっていた。布団は上品なもので、先程まで着ていたボロボロの服ではなく、気心地の良い寝間着を着ていた。身体を見ると、怪我をしていた所を包帯で巻いていた。
きっと誰かが、あの鬼を倒して此処に運んできたのだう。折角、命を捨てる覚悟ができていたというのに、酷いことをする。
起き上がると、襖が開いた。
そこには、森にいたあの男_
『…鬼!』
「待て、そう身構えるな。お前を食い殺すつもりはない」
嘘でしょ?鬼が人を助けるなんて…
『…鬼なのになんで助けたの?私は人間、餌だよ?しかも狼に襲われるぐらいとても弱い人間なのに』
男は襖を閉め、こちらに近付く。
「お前は自分を弱いと思っているようだな?」
『そうだよ。私の人生は奪われてばかり。奪われてばかりの弱者だよ。それ以外のなにがあるの?』
自虐的な笑みで言うと、男が座り込む。彼の紅い瞳と目が合う。
「お前は強い。私が見てきた人間の中で最も強い」
鬼に強いと褒められたのは驚いた。だけど、違う。
『違う。何を言ってるの?私は弱いの。何も知らないくせに勝手なこと言わないで!』
鬼の頬を叩こうとすると、その手を握られ、さらには私を押し倒し、上に覆いかぶさった。
「私は知っている。お前を見てきたからな。鬼殺隊員だろう?鬼殺隊が現れるときは、お前もそこにいたからな」
こいつ、私のことを知ってたのか…!
「お前の力も認めるが、特に守ろうとする意志が強い。私はそこに魅力を感じた」
『…でも、私は何もかも奪われてばかりで、守ることなんてできていない』
「それは、周りがお前を認めようとはしないからだ。一人であるお前を数で奪おうとする。それでも、強くなろうとするお前は強い」
初めてだった。鬼だけでなく、人にもこんなに慰めてくれなかった。
嬉しくて、嬉しくて。もう昔に泣き方を忘れた筈なのに、目から溢れる涙が止まらなかった。
「お前はいつも弱い人間に奪われてばかりで可哀想だ。もういっそのこと、人間を捨てて鬼になるか?」
鬼に?私が?
「すぐにとは言わん。覚悟を決めた時にでも言え。それまで、私の傍にいろ。私がお前を守り、強くしてやろう。名を名乗れ」
『…ありがとうございます。私の名は、愛乃路 A。貴方の…いえ、貴方様の名は?』
「鬼舞辻 無惨だ」
その時から私は無惨様に忠誠心を持つようになった。
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美穂(プロフ) - 終わってしまって寂しいです (2022年8月19日 22時) (レス) @page33 id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - 面白いです! (2019年11月6日 7時) (レス) id: f675202b80 (このIDを非表示/違反報告)
mayumi(プロフ) - この後、夢主ちゃんは鬼側即ち鬼殺隊の敵になるという事・・・。無限列車で煉獄は上弦の参に致命傷を負わされ、最後は夢主ちゃんに止めを刺されるシーン見たいですね。勿論柱達にも非業の最後もです。 (2019年10月19日 22時) (レス) id: 58f715f8f9 (このIDを非表示/違反報告)
シレア(プロフ) - 結婚しましょ((殴 あまりにも好きすぎて本音が出ちゃいました・・・け、結婚を前提にお付き合いしましょう!うん!それが良いです!(ダメです)語彙力が無いのでこのくらいしか言えないんですけど・・・作品鬼がかってて大好き過ぎるんです!頑張って下さい! (2019年9月23日 14時) (レス) id: 89e5ec03ad (このIDを非表示/違反報告)
五十嵐 夏目(プロフ) - 大好きです((( (2019年9月22日 23時) (レス) id: d58669ce2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユラン | 作成日時:2019年9月21日 18時