ハマの仔犬は脱走しました【ヒプノシスマイク】 (ページ21)

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20/一郎のお誘いページ21

『ねぇ、一郎…？』

私の肩には一郎の手が置かれ、逃げられない状態になっていた。

「…A、聞きたいことがある」

『聞きたいこと？』

「気になったことなんだがな…」

私から離れ、机の上に置かれたものを手にすると、私の前に突きつけた。

『これって…』

「あぁ…

Aって、こういうの(アニメ)興味あるか？」

"魔法少女れるりかちゃん！"と可愛い少女の描かれたDVDを真剣な顔で聞いてきた。

一言言わせてもらおう。
3年の間、マジでなにがあった？

孤児院にいた時はマンガは読んでいたけれども！
目の前にあるようなものなんて見ていなかったし、何より真剣な顔であんなことを言わなかった！

知らない間にヲタクが進んでたことに驚きでしかない。

「おい、聞いてるのか？」

『ウンウン、聞イテルヨ…そういうの、見たことない』

「そうか。なら、一緒に見ようぜ！」

……………はい？

「面白いし、めっちゃいい話なんだよ！あ、思い出すだけでも涙が…」

あれー？私の知ってる一郎は3年前に置いてきたのかー？

イケブクロでも名の知れた不良が、魔法少女の物語を思い出し泣き出しそうになるなど、誰が想像したものか。

「本当に感動してよ…仲間をかばうシーンとか…」

呆然としている私に、この良さを分かってくれ、そして見てくれと言わんばかりに説明してくる。

『あーはいはい。見るよ、見ますよ』

「よっしゃあ！じゃあ、リビングで見ようぜ」

そうして、リビングに行き、そのアニメを見ることにした。

よくよく考えてみれば、一郎のこの行動は甘えているものかもしれない…ずっと兄貴を頑張ってしていたみたいだし、一郎にも甘えさせてあげてもいいのかも…

「そろそろ始まるぞ」

ソファに座る私の隣に一郎が座るのを見ると、可愛い女の子が現れたテレビに視線を移したのだった。

テレビからそのアニメのエンディング曲が流れる。だが、画面に映るテロップがボヤけて見えない。

「なっ、いい話だったろ…ｸﾞｽｯ」

『うん…マジでいい話…ｸﾞｽｯ』

溢れ出る涙が止まらない。
これを見るまでは、「えー、マジかぁ…」とか思っていたが、前言撤回。一郎の言う通り感動した。

「他のアニメもあるけど、見るか？」

『…見る』

この後、それらをめちゃくちゃ見て、一郎にアニヲタ脳へと洗脳されました。