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「ジフナ、今日は帰るね」
あの飲み会以来、Aは少し変わったような気がしていた。俺しか見ていなかった心が少しずつ変わっていって、俺の心にまた、ぽかんと穴が開きはじめる。
俺の家でAの作った料理を食って。ソファーでテレビを見ていた時のことだった。そう言ってAは、俺と距離を置いた。
WZ「なんで？」
「んー…」
視線をテレビに向けたままそう聞いた俺に、Aは答えを探すように言葉を濁らせて。聞かなくても何となくわかるAの答えに、俺の中で芽生えた嫉妬は更に姿かたちを変えて俺を侵食し始めたような気がした。
WZ「スニョアになんか言われた？」
「…この間、スニョア変だったでしょ」
WZ「ああ、」
「私とジフナの事、気付いてたんだって」
あの日の帰りにでも話をしたのか。Aからもスニョンからも詳細を聞いてない俺はその答えを知らないけど、聞かなくても答えが見えるような気がしたんだ。
WZ「だろうな。つうか、牽制されたし」
「牽制？」
WZ「いまAから手を引いたら許してやるって」
「……」
WZ「まあ、無視したけど」
そう言った俺にAの小さなため息が聞こえて、何となく、終わりが見えたような気がした。Aの答えは、そのため息にすべて含まれているように感じたんだ。
「ごめん、ジフナ。今日これから、スニョアの家に行く約束してるの」
WZ「じゃあ今日はスニョアに抱かれるわけだ？」
「ジフナ、」
WZ「おまえ、スニョアに何も感じてないわけじゃねえだろ？」
「…え？」
薄々気づいていた。Aは昔から俺のことが好きだけど、多分きっと、真っ直ぐなスニョンに惹かれつつあったんだって。先に行動を起こしたスニョンに、Aは少しずつ惹かれて行った。
俺を愛しながら、その愛はスニョンにも傾き始めて。俺だけを見てくれなかったもうひとつの視線が、少しずつ本気になりはじめたんだってこと。
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作者名：緋夏
| 作成日時：2020年3月27日 15時
