月白 ページ8
お嬢 side
家に帰って一緒にご飯を食べる。私の"仕事"はこれからだ。
『 でも、犯人は一体何を考えてるんだろうね…実業家ばっかり狙って…。』
慎「 金目当てなら、ここ数日でもっと何か動きがあるはずだしな…何か大きな組織が動いてるのには間違いないけど、それが国内組織なのか海外組織なのか。」
『 虱潰しに捜査…ってなると大変そうだね。慎、ちゃんと眠れてるの?』
慎「 俺なんか、まだ全然マシな方だよ。先輩はもっと眠れてないだろうな…。」
『 …慎、また明日も早いんでしょ?いっぱい食べて、お風呂入って早く寝て、また明日から頑張れッ。私は慎がこの事件を解決してくれるって信じてるよ。』
慎「 …うん、ありがと。」
最近は夕飯の時間を共にすることで、捜査がどのくらい進んでいるのかを探っている。
慎の彼女である真衣は、日本でも有名な実業家の娘、所謂ご令嬢。実の父である組織のボスは表社会では名だたる実業家と肩を並べている結構凄い人だったりする。
自分が狙われないか心配…そんな雰囲気を醸し出していれば情報を得るのは容易かった。
そして、彼がお風呂に入っている間に連絡を飛ばす。
次の日の動きの決定は、大体この連絡を軸にしているらしい。
_______スマホをそっと閉じて部屋を見渡す。
最初は何の変哲もない部屋だったのに、随分と荷物も増えた。普通の、彼氏がいる女の人の部屋。そんな感じ。
何をもって普通なのかはわからないけど。
最近、この仕事をし始めて、組織の人たちにお嬢は"普通"であることにこだわりすぎだと言われた。
そうなのかもしれない。
これは仕事のため。仕事のために普通を演じているのだと、自分に言い聞かせていたけど、本当は……
ただ、私が、普通の女の人に、なりたかっただけなのかもしれない。
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作者名:m. | 作成日時:2022年11月17日 16時