モノクロ８＜ARS＞ (ページ30)

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しばらくしてパスタが運ばれてきた

翔くんがリスみたいに頬張ってるのを見て、可愛くて微笑ましくなってしまう

ぷくってまだほっぺが膨らんでいるのに

“んまっ”って呟きながら、次々にくるくるとパスタをフォークに巻きつけている

ソースが唇の横についてるのを見て、いつ言ってあげようか様子を伺っていると

私の視線に気づいた翔くんがフォークとスプーンを置いて

親指でぐいっと唇の端を拭って、それをぺろっ、と唇に含んだ

なんだ…気づいてたんだ

というか、色っぽいです

「…///」

翔「ほら、あーんしてみ」

唇に押しつけられたのはナポリタンの巻かれたフォーク

慌てて口の中にいれたけど、びっくりして味がわからなくて

翔くんが面白そうに私を見てるせいで、動揺してむせてしまった

翔「え、大丈夫！？」

大丈夫と縦に首を振ったけど、うまく言葉にできなくて咳きこむばかり

すると、翔くんが私の後ろにまわって背中をさすってくれた

翔「…大丈夫？」

少ししたら落ち着いて

後ろから覗きこまれて、こくこくと頷いたけど

近い

翔「もう、びっくりしたじゃんか…」

後ろから覆いかぶさってくるから、そのまま固まってしまう

だって熱い

翔くんに包まれてるってだけで、全身がふわふわしてくる

こんなにもドキドキするなんて、もう、私…

翔「ねぇ…A」

「…っ」

翔「キスされてた時、どんな気持ちだった…？」

耳元でじんわり聞こえる低い囁き声

たぶん、体温があがった

翔「拒まれたらやめようと思ってた。…なのに、嫌がるどころかすっげー可愛い顔してくれちゃって…なんつーか、Aってほんと…、反則」

心臓がもたないくらいに、翔くんが声を絞り出しながら言うから

このまま、死んじゃうんじゃないかと思った

翔「家に帰りたくない…つーか、帰したくないってこういう気持ちなんだな」

翔くんが吐息混じりにから、その度に耳の中に直接届いて震えてしまう

首にまわされた腕に、そっと手を伸ばそうとした

その時、コンコン、とドアがノックされる音がした

ぷつん、と緊張の糸が途切れる

翔くんが舌打ちして“はい”と答えながら私から離れた

よかった…と思う反面

寂しくて切ない、そんな気持ちになって

ぎゅぅと目を閉じた

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