ヤンデレ探偵社員から逃げませう【文スト】

病み10 ページ10

私の手首を縛るソレは簡単には解けないみたいだ。

ましてや女の力で解こうなんて…不毛な事である。


｢龍之介くん…痛いよ…外して…｣

｢貴様が僕についてくれば良いだけなのだ。｣


そうは言っても…ポートマフィアと探偵社は対立関係。
私が連れ去られたとなればみんなはどう動いてくれるのだろう…。

もしも…


助けに来てくれなかったら。



そんな嫌な予感が脳裏をちらつく。
だからこそ龍之介くんからの言葉に首を縦に振れない。


敦くんを横目で見るも、

気絶している彼には、私の懇願する視線は届かないようであった。

嗚呼、どうしたら。


｢お願い！やめて！！龍之介くん、もう昔みたいに友達ではないのだから！！！｣

その瞬間、首から全身、末端神経に伝わるビリビリとした痛みを感じて

目を閉じた。



｢手荒な真似などしたくはなかったが…やむを得ん。


A、貴様と僕が友達ではなくなった？笑わせるな。


僕は貴様を友達と思ったこともない。




僕と貴様は恋仲なのだから。｣


低音で不気味なその声の主の目は、光を取り入れることなく、ただ暗い中を彷徨う深海魚のような目であった。

ﾊﾞﾁﾊﾞﾁと嫌な音を鳴らしながら。

気絶した女を担いでその場から立ち去る黒い外套の男。


虎の少年の伸ばした手は届かない。
届かないことがこんなにも苦しいものなのか。

虎の少年は二つの影を見ることしか出来なかった。

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