嘘から生まれたボク Ⅰ (ページ41)

今日:44 hit、昨日:23 hit、合計:42,539 hit

40 ページ41

玉森side

その夜Aは

見ている俺が息が詰まりそうなほど

痛みを我慢し続け、意識を失うように眠った。

玉｢なんで何もないわけ、この部屋｣

夜中、苦しそうに眠るAは

触れると体が熱く、熱が出ていて

冷えピタを貼ってあげたくても

この家はどこを見ても何もない。

驚くほど家具は何も置いてなくて

I字キッチンの所に小さな冷蔵庫があるくらい。

でも案の定そこには、なんにも入ってなかった。

コンビニに買い出しに行きたいけど…

指紋認証のエレベーターや

網膜認証のフロアのロック

1度部屋を出たら

家主の意識がないこの部屋に

もう一度戻って来れる自信がなかった。

.

.

玉｢あれ…A？｣

目が覚めると、ベッドにAはいなかった。

A仕事行ってくる

A部屋の鍵は次会う時まで持ってて

と、LINEが入っていた。

は？！絶対にダメ！

今動いたら治るどころか悪化する！

急いで電話をかけるも

Aは移動中なのか電話に出ない。

仕方なく、通話履歴の真上にいた宮田に電話をかける。

.

宮『もしもし、玉さん？』

玉｢宮田！Aそっち行ってない？！｣

宮『A？いや、来てないけどどうかしたの？』

玉｢いや…｣

言えない。

Aのことを勝手に、俺がバラすなんて出来ない。

宮田の質問になんて答えようか困っている時

電話越しに｢A？｣と言うミツの声が入ってきた。

北『あ、もしもし玉？』

玉｢ミツ？Aどこに行ったか分かるっ？｣

北『Aなら長崎行ったよ？

お披露目会で、何日か泊まりの仕事になるって。』

玉｢…長崎？｣

あんな体で、長崎まで行ったの？

玉｢…そう、ありがとう｣

情けない。

結局俺は何もしてあげれなかった。

俺も仕事があるから迎えにも行けない。

追いかけて今すぐにでも変わってやりたいのに。

Aが俺のために用意してくれた仕事を

棒に振るなんて俺には出来なかった。

.